マイナンバーと相続手続き!
相続税申告と戸籍収集にメリット!
今回は、「マイナンバー制度によって相続手続きは変わるのか」ということについてのお話です。
マイナンバー制度の活用が本格的に始まると、相続手続きはもちろんのこと、いろいろな手続きの進め方が大きく変わってくることが考えられます。
自身のマイナンバーが通知されてから数年が経過していますが、まだまだ一般に浸透していくまでには時間がかかりそうです。
とはいえ、マイナンバーをさらに浸透させようとする国全体の働きかけもあります。なので、マイナンバーがないと不自由に感じる世の中になっていくのも時間の問題でしょう。
それでは、マイナンバー制度と相続の関係の前に「マイナンバーとは何か?」について解説していきます。
マイナンバー制度とは?
マイナンバーというのは、平成27年10月から通知が始まった国民一人一人が持つ12桁の番号のことです。ちなみに、外国籍の人でも住民票があれば通知の対象となります。
マイナンバー制度の目的は、まずは行政機関や地方公共団体などの複数の業務間での連携を進め、作業の重複などの無駄を削減することにあります。つまり、行政の効率化を目的としているのです。
また、添付書類の削減などの行政手続きが簡素化されれば国民の負担も軽減されますし、行政機関が持っている自身の情報を確認したり、行政機関からいろいろなサービスの通知を受け取ることも可能になれば、国民の利便性も向上します。
さらに、所得などの受給状況を把握しやすくなれば、負担を不当に逃れることや給付を不正に受け取ることを防ぐことができ、本当に困っている人にきめ細やかな支援を行うことが可能になります。すなわち、公平・公正な社会の実現が可能となるわけです。
マイナンバー制度のメリットとは?
通知されたマイナンバーを市区町村に申請すると、顔写真付きの身分証にもなる“マイナンバーカード”を受け取れます。マイナンバーカードを取得すると、コンビニで住民票の写しを取得できるなど、いろいろと便利な機能を利用することが可能になります。
マイナンバーが必要となるところは?
マイナンバーは、勤務先、アルバイト・パート先、年金事務所、金融機関などで提出を求められることがあります。また2018年秋より開始予定の“マイナポータル”にも必要になります。
ちなみに、マイナポータルというのは、子育てや福祉・介護などの行政手続きがワンストップで利用できたり、行政からのお知らせが自動的に届いたりといったサービスのことです。
なお、マイナンバーは、手続きのために行政機関などに提出する場合以外は、むやみに提供することはできませんので注意してください。行政機関の職員を装ってマイナンバーの情報を盗み取ろうとする新手の詐欺も発生していますので十分に注意しましょう。
相続手続きにマイナンバーが必要になるのはいつから?
平成27年10月から通知が始まったマイナンバー制度ですが、私たちの生活においてはまだまだ浸透しているとは言い難いです。
ですが、マイナンバーの提出義務が発生する手続きは確実に増加しているのも事実です。ちなみに、今から解説する相続に関する手続きも、マイナンバーの提出が義務付けられる手続きの一つになります。
それでは、相続手続きにマイナンバーが必要になるのはいつからなのでしょうか?
これについては、実はすでに平成28年1月1日から相続税申告の際にマイナンバーの提出が義務付けられています。
実際にどのような人がマイナンバーの提出対象者になるのかというと・・・
それは、平成28年1月1日以降に相続や遺贈により財産を取得した人です。なお、被相続人のマイナンバーについては、確認できなければ提出対象外なので記載しないで提出することが可能です。
相続手続きでのマイナンバーの注意点は?
注意点としては、相続税の申告書の控えを保管するときです。
マイナンバーには大切な個人情報が記載されています。申告書にはマイナンバーが記載さ入れていますから、人目につかない場所に大切に保管するようにしてください。
また、相続税のみならず贈与税の申告書にもマイナンバーの記載が義務付けられました。相続と贈与は密接不可分の関係ですから、不自然な贈与が続いていると相続時に税務署から突っ込まれる可能性が高くなります。
それから現時点においては銀行でのマイナンバーの提出は義務付けられていませんが、任意で転出することは可能です。
しかしながら、今後数年のうちに銀行など金融機関においてマイナンバーの提出が義務付けられるのは時間の問題といえます。
ぶっちゃけて言うと、現時点では、現金による贈与に関しては税務署が把握することはできません。なので、贈与税を未申告のままにしていても税務署にバレることはありません。
ですから、贈与税の時効が成立すると納税義務は消滅する、つまり贈与税の申告から逃れることができたわけです。
ですが、今後は税務署が口座の動きを把握できるようになれば、そういった贈与税の申告漏れは指摘されることになると思われます。
なお、現金贈与は税務署が把握できないので贈与税申告から逃れられると前述しましたが、相続時には税務署が被相続人・相続人の預貯金口座を徹底的に調査します。
そこで不審なお金の動きがあることがわかれば、必ず税務調査の対象になります。そうすると、贈与を受けたお金は贈与財産ではなく、被相続人の相続財産とみなされることになります。
つまり、その金額に対する相続税だけでなく、さらに延滞税や重加算税など多額の罰金を支払わなければならなくなるのです。ということで、そのような贈与を考えるのは絶対にやめてください。
今後マイナンバーはどうなるの?
続いて、これからマイナンバーはどうなるのかというお話です。
現時点においては、相続税・贈与税・所得税など税金に関するもの、あるいは社会保障に関係する手続き、これらにおいてマイナンバーの提出を求められます。
とはいえ、今後は税金や社会保障に関するもの以外の手続きでもマイナンバーの提出を求められるようになってくるはずです。ですから、前述のとおり、銀行などの金融機関に対してマイナンバーの提出が義務付けられるのも時間の問題です。
こうしてマイナンバーによって預貯金口座が管理されるようになると、相続時に税務署は最も知りたいお金の動きについて入念に調査することができます。つまり、お金の動きを簡単に把握されるようになるのです。
さらに、使途不明なお金についての追及についても、これまで以上に厳しくなると考えておいたほうが無難です。
ということで、マイナンバーにより管理されるものは確実に増えていきますから、相続財産のみでなく贈与財産や給与・年金・株式の配当金など、様々な資産状況が筒抜けになってきます。
マイナンバーにより注意すべき人は?
マイナンバーにより何から何まで管理されることによって資産状況が容易に把握できるようになります。
なので、専業主婦であるにもかかわらず預金残高の多い人や株取引の多い人、年収に対して貯蓄が少ない人、これらの人は税務調査の対象になりやすいので注意が必要です。
近い将来相続が発生すると、税務署が被相続人の全相続財産を容易に把握して、相続人自身が相続税の申告をしなくても、マイナンバーによって税務署が相続税を計算し納税額を相続人に提示するといった相続の進め方になるかもしれません。
結局、マイナンバーの導入は、わたしたちは何から何まで監視されているだけですから、税務署側が得をするだけのようにも思えます。
ですが、そうとも言い切れない面もあるのです。というのは、マイナンバーによって、私たちが相続時に得をすることもあるからです。
相続手続きにおけるマイナンバー制度のメリットとは?
続いて、マイナンバー制度が導入されたことによって、相続手続きがどのように変わったのかというお話です。
マイナンバー制度は税務署側が得をするのみで、私たちには何もメリットはないと思われがちです。ですが、実はマイナンバー制度は私たち側にも2つのメリットがあるのです。
まずマイナンバー制度導入による相続手続きの最も大きなメリットの1つに“戸籍の収集”があります。
戸籍の収集というと「役所に行けばいいんでしょ」と思いがちです。ところが、戸籍の収集というのはそれほど簡単には進まないものなのです。
これまでは“被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集める”という作業が、相続手続きの最初の大きな壁となっていました。今後はマイナンバーによって戸籍も管理されますので、戸籍収集の手間を省くことができるようになります。
なので、不動産や車などの名義変更など、様々な場面で必要になる戸籍の収集ですが、これが簡単にできるようになります。
2つ目のメリットは・・・
マイナンバー制度導入による2つ目のメリットは、財産状況を把握しやすくなることです。金融機関等、色々なものにマイナンバー制度が導入されると、常に監視されているようにも感じます。
ですが、私たちが相続人となった場合には非常に大きなメリットを受けることができます。
仮に相続が発生した場合、被相続人の財産状況を細部にわたるまで把握している人はそれほど多くないと思います。夫婦間であれば把握している人もいるかもしれませんが、親の財産状況まできちんと把握しているという人はやはり多くはないでしょう。
例えば、家族には内緒で別荘地を買っていたり、証券会社に口座を開設していたりといったことはよくあることです。家族間であっても「このような財産があったなんて全く知らなかった」というような話は決して珍しい話ではないのです。
土地の権利証や把握しきれていなかった口座が相続税の申告後に発覚すれば、場合によっては追徴課税の対象にもなりかねません。こうしたことに対して、マイナンバーが広く浸透されれば、そのような申告漏れを事前に防ぐことができるようになります。