相続対策で生命保険を使うメリットとは?
今回は、生命保険と相続についてのお話です。死亡生命保険、つまり「私に万一のことがあったら保険金を○○に支払ってください」という保険契約のことです。これは受取人が誰であるかによって、相続財産になるかならないかが決まります。
まず特定の人が受取人になっている保険契約では、この契約により支給される保険金は相続財産にはなりません。なぜなら、指定されている人固有の財産となりますので、他の相続人との分割の対象にならないからです。
次に、受取人が相続人とされている保険契約です。この契約でも保険金は相続財産にはなりません。法定相続分とは関係なく相続人で等分します。約款中に「保険の受取人の指定がない場合は相続人に支払う」とある場合も同様です。
被相続人が保険受取人の場合は?
被相続人が自分を保険受取人に指定している場合を考えます。
自分が亡くなったときに自分に保険金を支払うという保険契約です。少し疑問の残る契約内容ではありますが、実際にはよくあるケースになります。この場合の死亡保険金は被相続人のものですから、相続財産として遺産分割の対象となります。
では、保険金受取人が本人よりも先に死亡しているケースではどう考えたらよいのでしょうか?保険法には以下のような条文があります。
「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡した場合、その相続人全員が保険金受取人となる」
つまり、保険金受取人が死亡した時点で、保険契約者本人は受取人の変更が可能なわけです。その変更をしなかった場合の措置です。
生命保険の遺産分割は?
最後に生命保険が相続人に支給されるとして、その分割はどのようにするのかについて確認します。保険金の支給において民法が関係するのは、誰が相続人かということだけです。
つまり、保険金が相続財産にならないケースでは、そもそも法定相続分という考え方自体が発生しないのです。なので、受取人が複数の相続人であり、その法定相続分が異なる場合であっても、全員均一に配分されることになります。
相続対策で生命保険を使うメリットとは?
続いて、相続対策として生命保険が使えるというお話です。生命保険は加入率が9割を超えていますので、ほとんどの方が何らかの生命保険に加入していると思います。この生命保険を相続対策に使うということが一般的に行われています。
というのは、生命保険を使うと「500万円×法定相続人の数」が非課税になっていますので、相続税の節税になるからです。ただ、契約形態には縛りがあります。
受取人が法定相続人でないといけないとか、契約者、被保険者、受取人がその加入者と同じでなければいけないとか、そういったような契約形態の縛りはありますが、節税対策になります。そして、もう1つメリットがあります。
生命保険の名義で受け取ったものは、その人固有の財産、受取人固有の財産となりますので、その保険金が遺産分割協議の対象にならないのが原則です。ですから、遺産分割協議の争いを防げるというメリットがあるのです。
ということで、生命保険をうまく使うというのは、相続対策全体を考えたときには非常に有効な手段だといえます。
生命保険金の受取人が先に亡くなったら?
父が母が万が一のときに備え生命保険をかけていたけれども、受取人だった父の方が先に亡くなってしまった場合は、その保険金はどうなるのでしょうか?
その場合は、受取人が亡くなってしまいますので、その生命保険契約は相続財産になります。相続財産に該当する生命保険は、相続人の間で遺産分割の話し合いをする必要があります。
その生命保険の価値はどこで図るのかというと、契約者が亡くなった時点の解約返戻金で判断することになります。逆に言うと、解約返戻金のない掛け捨ての保険は、相続財産の対象とはならないということになります。
生命保険金は相続税が非課税?
続いて、生命保険金は受け取った時に相続税は非課税なのかというお話です。まず生命保険金というのは、どなたかが亡くなったときに下りてくるお金です。そして原則として、相続税の中で税金を計算するということになっています。
その時に、非課税の金額というのがありますので、そのまま丸々そのもらった保険金額が他の預貯金や土地建物などと合わさって計算されるわけではありません。つまり、非課税金額を差し引いた後の金額が足し算されるというイメージです。
では、いくら差し引いてもらえるのかということになりますが、「500万円×法定相続人の数」となっています。
例えば、夫が亡くなって妻と子供1人という場合には、500万円×2人=1,000万円が非課税金額となります。また、夫が亡くなって妻と子供2人という場合なら、500万円×3人=1,500万円がが非課税金額となります。
この非課税金額は、実際にもらった保険金額から引き算できますよということです。例えば具体的な数字で見ていきますと、夫が亡くなって妻と子供2人の場合で、妻が保険金を2,000万円もらったというケースです。
この場合は、法定相続人の数は3人ですから「500万円×3人=1,500万円」が受け取った2,000万円から引き算できるということになります。
つまり、その残り「2,000万円−1,500万円=500万円」と、亡くなった夫が持っていた他の預貯金や不動産(土地・建物)などと足し算して、その財産の全体について相続税の計算をしていくという流れになります。