税務調査で聞かれる質問とは?
丸一日かけて行われる税務調査ですが、その際にどのようなことを質問されるのでしょうか?
前述のとおり、税務調査当日は午前10時頃に税務署の調査員2人が、被相続人が生前に住んでいた自宅へとやってきます。まず午前中はとりとめもない世間話から始まります。そこでは被相続人や相続人についての質問に多くの時間が割かれます。
具体的にどのような質問がされやすいのかというと・・・
まず被相続人(亡くなった人)についての質問は、出生地や趣味、職歴、取引のあった金融機関、貸金庫の使用があったかどうか、生前贈与があったかどうか、どのように亡くなったのか、亡くなる前後に入院や介護があったかどうか、どのようにして財産を築き上げたのかなど、かなり細かく質問されます。
続いて相続人によく質問される項目をざっと挙げると・・・
職業や現在のお住まい、税理士との関係、取引のある金融機関、貸金庫を使用しているかどうか、相続税を納税した金融機関、相続人の自宅の購入金額や売却金額、相続人の家族構成(年齢・学校名・職業)、被相続人の配偶者の財産状況、財産管理を行っていた人、相続開始直前に下した現金の使途、相続人の投資状況などがあります。
ざっと挙げただけでもこれだけの項目がありますから、結構大変だと思います。
なぜ税務調査でたくさん質問されるの?
なぜこれだけの項目の質問をされるのか疑問に思われるかもしれませんが、税務署側には明確な意図があるのです。
例えば、被相続人の趣味がゴルフだったとします。それなのにゴルフ会員権が相続財産に計上されていなかったらどうでしょうか?あるいは、被相続人の趣味が骨董品集めだっとします。それなのに骨董品が相続財産に計上されていなかったらどうでしょうか?
こうしたことが発覚すれば当然に疑われることになります。
また、専業主婦の妻が財産管理者の場合、妻に多額の預貯金があれば、夫から渡された生活費の残りを貯蓄に回している、つまり実質的には夫から贈与された夫の相続財産とみなされてしまいます。
さらに、相続人の職業について質問するのは、年収を推定するためです。相続人の預貯金のバランスを見て、預貯金残高があまりにも多い場合には被相続人から贈与を受けていたのではないかという疑いがかけられることになります。
このように調査員が質問してくる内容には、すべてにおいて明確な意図があるのです。
税務調査の質問にどう答えたらいいの?
まず正直に答えることが大前提です。ただし、余計なことまで話すと逆に怪しまれてしまう可能性もありますので注意が必要です。
ということで、調査員から聞かれた質問には、聞かれたことだけを正直に答えるという姿勢で臨めばOKです。
午後の税務調査はどう進んでいくの?
午前中の調査が終了すると、調査員は必ず外で休憩を取りに行きます。ここでお昼ととるわけですね。ちなみに、こちらでお昼を用意していたとして必ず断られますので、事前に用意しないように注意してください。
お昼の休憩を入れた後、午後の調査はおおよそ午後1時頃から始められます。午後の調査の主となるのは現物確認です。
その現物確認の中で必ず確認を求められるのは、通帳とハンコ(実印、銀行印)です。これは被相続人のものだけでなく、相続人のものも提出を求められます。なので、これらは事前に用意しておくことをおすすめします。
通帳の確認とは?
通帳を見るのはお金の動きを把握するだけではありません。通帳を見て、通帳に残されているメモ書きの確認、名義預金ではないかどうかの確認をしているのです。
通帳にメモ書きを残している人は意外に多いものです。例えば、通帳に「○○に貸し付けた」というメモ書きが残されていて、その金額について申告書に何も記載がなければ、後に課税対象になる可能性もあります。
一方、名義預金といって、実際には口座のお金は被相続人のものなのに、口座名義だけを配偶者や子供、孫などの相続人にしている口座がある場合、また被相続人である夫からの生活費の残りを専業主婦の妻が貯蓄していた金額については、贈与契約書が必要です。
この贈与契約書がなければ相続財産とみなされますので、このような点について調査で確認していくのです。
遠方に住んでいる相続人名義の通帳が被相続人の自宅にあったり、銀行員が被相続人のものと同一であったりすると、名義預金ではないかとの疑いがかかることになります。
ハンコはどのように確認するの?
ハンコ(実印、銀行印)を提出すると調査員は必ず印影を取ります。この印影を取る際にも税務署独自のルールがあります。まずは朱肉をつけずにハンコを押します。なぜこのような空印を取るのかというと、最近使ったかどうかを確認するためです。
朱肉をつけずにハンコを押したのに、ある程度文字がきれいに写し出されば、「最近何か重要な取引をしたのではないか?」と疑われる可能性が高まります。
その次に、朱肉をしっかりつけて数回押して印影を取ります。ここでは、1度の朱肉でどれだけ印影が薄れるのかを確認しているようです。
通帳と印鑑以外の提出物は?
続いて、税務調査の際、通帳と印鑑以外に何を提出する必要があるのかというお話です。
まずは土地関係の書類ですね。それから保険証書、ゴルフ会員権、香典帳、電話帳、年賀状、日記、貸金庫や自宅金庫の中身、などの提出を求められることがあります。
ちなみに、銀行の貸金庫については、その場で「見に行かせてください」といわれるケースが少なくありません。
土地関係の書類や保険証書などの重要書類については、申告漏れがないかなどの疑いから、提出を求められるのはイメージしやすいかと思います。
ですが、香典帳や日記などについては、なぜそのようなものまで見せなければならないのかと疑問に感じるかもしれませんね。ただこれらのものは、税務署にとっては喉から手が出るほど見たいものでもあるのです。
なぜなら、金融機関や証券会社などとの取引があるかどうかが確認できるからです。
例えば、X証券会社からの年賀状があったら何らかの取引があったことが確認できます。すると、もし相続税の申告書にX証券会社の口座が記載されていなければ、当然怪しまれることになります。
調査員は必ずトイレを借りる?
またこれに付随して、税務署の調査員はほぼ100%トイレを借ります。トイレを借りるフリをしてトイレ内のカレンダーを確認しているのですね。
具体的にはカレンダーに書かれている会社名を確認したり、家の様子をくまなく観察したり、骨董品などが置かれていないかなど、そういったことを確認しているのです。
例えば、カレンダーに書かれている会社名が金融機関や証券会社であったら、申告書に記載されているかどうかを調べられます。また部屋の一部をリフォームした形跡などがあったら、その資金の出所を聞かれたりもします。
さらに骨董品などがあれば、申告書に記載されているかどうかについても確認します。
調査員の質問にはすべて意図があり、また調査員の行動や発言には一切無駄なことはありません。調査員は常に目を光らせているということを忘れないように注意してください。