被相続人死亡後の医療費控除と債務控除はどうなるの?
今回は、被相続人死亡後の医療費控除と債務控除はどうなるのかについてのお話です。
人が亡くなる前後に医療費が発生することは決して珍しいことではありません。亡くなった人(被相続人)が生前に支払ったのか、あるいは相続人が建て替えて支払っていたのか、それによって税金の取り扱いは変わってきます。
被相続人の医療費は医療費控除の対象になるの?
被相続人の医療費は、所得税の医療費控除の対象になるのでしょうか?それともならないのでしょうか?
まずは被相続人が亡くなる前に支払っていた医療費についてです。このケースでは、その医療費は被相続人の準確定申告において医療費控除の対象になります。
ただし、被相続人の死後に相続人が被相続人の財産の中から支払った医療費については、被相続人の財産ではあるものの、被相続人が支払ったことにはなりません。なので、医療費控除の対象にはなりません。
なお、準確定申告というのは、相続発生4ヶ月以内に行う、被相続人の所得税の申告を相続人全員で行うことをいいます。
相続人が被相続人の医療費を支払っていた場合は?
次に、相続人が被相続人の医療費を支払っていた場合です。
このケースでは、相続人が医療費を相続開始前に支払っていたか、相続開始後に支払っていたか、そういった区別はありません。ですが、被相続人と生計を同一にしていたか、そうでなかったかで扱いが変わってきます。
被相続人と生計を同じくしていた相続人が医療費を負担していた場合には、その医療費は相続人ご自身の確定申告において医療費控除の対象になります。反対に、生計が別であった場合には医療費控除の対象にはなりません。
被相続人の医療費は相続税の債務控除の対象になるの?
次に、被相続人の医療費が相続税の債務控除の対象になるのか、あるいはならないのかについてです。
被相続人が亡くなる前に支払っていた医療費について、このケースではただ単に被相続人の相続財産の中から支払っているだけですから、債務控除というよりはむしろその分だけ相続財産が減るといったイメージになります。
相続人が被相続人の医療費を支払っていた場合は?
次に、相続人が被相続人の医療費を支払っていた場合です。
このケースでは、医療費を相続開始前に支払っていたか、相続開始後に支払っていたか、それらにかかわらず相続税の債務控除の対象になります。
先ほど所得税の医療費控除の説明をしましたが、生計を同じくする相続人が支払った医療費については、その相続人自身の所得税の医療費控除の対象となります。なので、この場合においては、相続税と所得税の両者において控除の対象となります。
所得税と相続税、両者の控除の取り扱いをまとめると・・・
被相続人が生前に支払っていた医療費は、準確定申告において所得税の医療費控除の対象になります。被相続人と生計を同じくする相続人が支払った医療費は、相続人自身の所得税の医療費控除の対象となり、相続税の債務控除の対象にもなります。
被相続人と生計を同じくしていない相続人が支払った医療費は、相続人自身の所得税の医療費控除の対象とはなりませんが、相続税の医療費控除の対象にはなります。
ということで、医療費を支払った時期や誰が負担していたのかによってその取り扱いは変わってきますので注意して下さい。
準確定申告とは?
続いて、相続の中でも準確定申告についてのお話です。
準確定申告というのは、“準”という言葉と“確定申告”が結びついていますが、何が“準”なのかというと、一言でいうと「亡くなった人の確定申告」ということです。
亡くなって相続が発生した場合に、注意すべき期限が3つあります。3ヶ月、4ヶ月、10ヶ月です。この3つが注意すべき重要なところになります。
まず1つ目、3ヶ月は相続放棄ができる期限です。2つ目、10ヶ月は相続税を申告しなければいけない、申告・納税の期限になります。そして3つ目、4ヶ月は準確定申告になります。
準確定申告は、亡くなった人はその年の途中で亡くなりますので、そのときまでにいくらの所得があっていくら納税すべきかというところの確定申告が、亡くなってから4ヶ月と決められています。
3ヶ月や10ヶ月というのはあなたも聞いたことがあるかもしれません。ですが、4ヶ月というと、3ヶ月と4ヶ月の間は1ヶ月しかないということもありますから、ここはしっかりと把握しておかないと、4ヶ月が何となく過ぎてしまうことにもなりかねません。
もちろん準確定申告によって税金が戻る人はいいのですが、税金を納める人については過ぎてしまって1年など経ってしまうと、そこに延滞税などがかかってくる可能性もありますので注意が必要です。