小規模宅地等の特例の改正!
老人ホームの要件:要介護と同居親族
前回は小規模宅地等の特例の税制改正、二世帯住宅の税制改正について紹介しました。実は平成26年にもう1つ税制改正が行われています。今回はそのもう1つの改正についてのお話です。
どういった改正かというと、老人ホームに入った場合の取り扱いです。これも平成26年1月1日に変わっています。
老人ホームに入った場合の小規模宅地等の特例の改正とは?
平成25年まで、この老人ホームが絡んだときにどういった取り扱いがあったのかというと・・・
例えば、お父さんお母さんが住んでいる自宅があったとします。お父さんお母さんも高齢になってきたので老人ホームにでも入ろうかということで老人ホームに移りました。そして、お父さんお母さんは老人ホームに入って、その施設で亡くなりました。
このもともと住んでいた自宅、実家を子供が相続する、こういったシチュエーションにおいて小規模宅地等の特例は受けられたのかというと、実はこれ受けられませんでした。
なぜかというと、そもそも小規模宅地等の特例というのは、亡くなった人が自宅として使っていた土地について8割引きがある、そういった特例だったからです。
つまり、老人ホームに入ってしまうと、このもともと住んでいた家というのは、これは自宅ではなくてただの空き家だと言われてしまったのです。
自宅というのはもう老人ホームなのです。ですから、老人ホームが自宅であって、もともと住んでいた家については自宅でも何でもなく単なる空き家なので特例は受けられないという取扱いになっていたのです。
でもこれってどうですか?言いたいことはわかりますがひどい取り扱いですよね。実際、老人ホームに入ると税金が何千万円も増えるということはかつてはありました。そこでこの取り扱いはちょっと酷だということで、平成26年1月1日に改正が行われました。
具体的には・・・
たとえ老人ホームに移ったとしても、それまで住んでいた家を自宅としてみていいですよ、つまり8割引きの特例を受けてもいいですよというふうに改正されました。それが以下の老人ホームに入居した場合の取り扱いです。
「老人ホームへ入居したため、居住の用に供さなくなった旧自宅敷地については、次の適用要件を満たした場合、小規模宅地等の評価減の適用可能(平成26年1月1日以後の相続について適用)」
どういった適用要件かというと、その条件は2つです。
1つは、被相続人(亡くなった人)に介護が必要なため入所したものであることです。介護が必要だから老人ホームへ入所するというものですね。実際にここでは要介護認定ですとかそういったことが条件になってきます。
ですが、老人ホームに入るタイミングで介護認定がないとダメかというとそういうわけではありません。亡くなったときに介護認定があればこの条件は満たします。ですから、ここは実はそれほどハードルは高くありません。
2つ目は、自宅が老人ホーム入所後、新たに貸付等の用途に供されていないことです。
これは何かというと、老人ホームに移るのでその自宅を賃貸に出す、そういったようなことをした場合にはこの8割引きの小規模宅地等の特例は受けられませんよ、という条件です。
というように、上記の2つの条件を満たしておけば8割引きの特例を受けてもいいですよというふうに改正されました。なので、老人ホームへの入所を検討されている人からすると非常に良い改正が行われたことになります。ただし、実はここにも大きな落とし穴があります。
老人ホーム入所の落とし穴とは?
これによって余計にわかりにくくなったわけではないのですが、ここにも注意しないといけないポイントがあります。
先にお伝えすると、老人ホームなどの施設、この施設が絡んだときの小規模宅地の判定については必ず税理士など専門家に相談するようにしてください。
ただ税理士の中でもここの判定は極めて難しいところですので、本当に相続税に強い税理士に相談されることをおすすめします。
例えばどのような間違いが想定されるのかというと、非常によく起こるパターンは次のようなものです。
例えば、お父さんお母さんが住んでいる自宅があります。そして老人ホームに移ります。その後、老人ホームでお父さんお母さんが亡くなりました。自宅は子供が相続します。
この場合、8割引きの小規模宅地等の特例は受けらるでしょうか?
結論から申し上げますと、特例は受けられません。先ほど、お父さんお母さんが老人ホームに入所したとしても特例の対象になるという改正が行われましたというお話をしました。ですが、こういったシチュエーションですと実は受けられません。
このシチュエーションで何が引っかかっているのかというと「同居親族」の要件です。小規模宅地等の特例というのは、自宅を同居している親族をすれば8割引きになりますよという特例でしたよね。
先ほどの事例で言うと、確かに自宅と認めてもらうことはできているのですが、同居はしていません。では、老人ホームに入居したときには老人ホームで同居しろというのか、というと実はそうではありません。
ここの同居の判定というのは、老人ホームに入居する前の状況で判定するからです。
つまり、お父さんお母さん子供、3人で一緒に暮らしていました、そしてお父さんお母さんは老人ホームに移りました、その後に子供が自宅を相続しました、これなら小規模宅地等の特例を受けることができます。
同居親族が相続していますので8割引きの特例を受けることができます。
老人ホーム入居後に子供が引っ越してきた場合は?
例えば、お父さんお母さんが老人ホームに入居します。でも空き家にしておくのはもったいないから、子供が入れ替えで引越しをしてきました。この場合はどうなるでしょうか?
この場合は、小規模宅地等の特例は受けられません。入れ替えの引っ越しというのはダメだということです。つまり、同居はしていないということですね。これについては国税庁から公式な文書が出ています。
ということで、二世帯住宅ですとか老人ホームの税制改正というのは、確かに納税者にとって非常に有利な改正ではあるのですが、しっかり前提条件を確認しないと、やはり8割引きの特例を受けられなくなってしまうというトラブルもあります。
なので、もしこうした論点がある場合には、税理士など専門家に相談されることをおすすめします。