相続順位と法定相続分!養子の代襲相続と2割加算!

 

 

相続順位法定相続分

養子代襲相続2割加算

 

 

今回は、まず相続順位についてのお話からです。

 

相続人になれるのは誰なのか?ということについてはすでにご存知かもしれません。相続順位で、常に相続人となれるのは配偶者です。

 

ただし、入籍していない内縁関係の夫婦の場合、相続権は一切発生しません。そして、第一順位者になるのは子供です。

 

ただこの場合、内縁関係の夫婦の間に生まれた子供で夫からの認知を受けた非嫡出子には、嫡出子(入籍している夫婦の間に生まれた子供)と同等の相続権が発生します。

 

つまり、夫からの認知を受けていない非嫡出子には相続権がありませんので注意が必要です。

 

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推定される嫡出子と推定されない嫡出子とは?

 

ちなみに、この嫡出子は“推定される嫡出子”と“推定されない嫡出子”に分類されます。

 

推定される嫡出子については、婚姻後に妻が妊娠した子供、または婚姻後200日経過後に生まれた子供、もしくは離婚後に300日以内に生まれた子供は、前夫の子供と推定されます。

 

一方、推定されない嫡出子というのは、わかりやすく言うと、できちゃった婚など、妊娠が発覚してから入籍した夫婦の間に生まれた子供のことを言います。

 

基本的には入籍した時期を問わず、入籍した夫婦の子であれば相続時に何か問題が起きることはありません。

 

ただし、相続時に、共同相続人や次順位の相続人に“推定期間外に生まれた子に父子関係は認められないから、相続権は自分にある”と反論される可能性もあります。

 

なので、籍を入れているから問題ないと思っていると、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれませんので注意は必要です。

 

 

第二順位者となるのは・・・

 

父母や祖父母などの直系尊属です。

 

父母・祖父母双方がいる場合には、血縁の近い父母が優先されます。そして、第三順位者となるのは、兄弟姉妹です。

 

 

相続順位のまとめ

 

入籍している夫婦の相続においては、必ず配偶者に相続権が発生するということを覚えておいてください。

 

そして、自分の順位より上の相続人が一人でもいる場合には、その他の順位の相続人には相続権が発生しないということも合わせて押さえておいてください。

 

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例えば、相続人候補者が、配偶者、第二順位者の父母、第三順位者の兄弟姉妹の場合には、配偶者と父母のみに相続権が発生するということです。つまり、兄弟姉妹には相続権はないということになります。

 

なお、配偶者がいない場合には、第二順位者の父母のみに相続権が発生します。

 

 

法定相続分とは?

 

続いて、相続割合、すなわち“法定相続分”についてのお話です。法定相続分というのは、民法で決められている相続割合のことを言います。

 

遺言書がなければ、この法定相続分に応じて遺産分割協議を進めていきます。もちろん相続人同士で話し合いがまとまれば、法定相続分以外でもOKです。

 

法定相続分は、誰と誰が相続人となるのか、つまり相続人の組み合わせ次第でその割合が変わってきます。それでは、想定できる組み合わせをすべて当てはめて計算していきます。

 

まず相続人が配偶者と子供の場合は・・・

 

この場合の法定相続分は、配偶者が1/2、子供が1/2となります。

 

次に相続人が配偶者と直系尊属の場合は・・・

 

この場合の法定相続分は、配偶者が2/3、直系尊属が1/3となります。

 

さらに、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は・・・

 

この場合の法定相続分は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。

 

なお、相続人となる子供や直系尊属、兄弟姉妹が複数人いる場合には、その人数で均等に割ったものが一人当たりの法定相続分となります。また被相続人に配偶者がいる場合には、子供や直系尊属、兄弟姉妹は配偶者とセットで相続人となります。

 

一方、被相続人に配偶者がいない場合には、順位の高い相続人のみですべての財産を相続することになります。

 

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遺留分は?

 

遺留分というのは、どのようなことがあっても相続できる相続分のことを言います。この遺留分は、兄弟姉妹には認められていません。

 

遺留分の割合は、配偶者と子供には法定相続分の1/2、直系尊属には法定相続分の1/3です。もしもこの遺留分の侵害を受けた場合には、遺留分減殺請求で遺留分に相当する財産を取り戻すことができます。

 

 

代襲相続とは?

 

代襲相続というのは、被相続人より前に相続人が他界していた場合や、相続欠格・廃除によって相続権を剥奪された相続人がいる場合、こうした場合に、その相続人の直系卑属(子・孫)に相続権が移行する制度です。

 

ただし、相続放棄者には代襲相続はありません。なので、共同相続人がいない場合には、次順位の相続人に相続権が移行することになります。

 

例えば、親より先に子供が亡くなったケースならその子供、すなわち親から見て孫がいる場合には、その孫が相続人となります。

 

ちなみに、その孫が複数人いる場合には、法定相続分をその人数で割ることになります。また、孫がいない場合にはひ孫、玄孫とどこまでも再代襲を繰り返していきます。

 

ただし、被相続人の兄弟姉妹の代襲は、被相続人から見て甥・姪で終了します。

 

なぜこのような制度になっているのかというと、“笑う相続人”を出さないためです。代襲相続というのは、あくまでも直系卑属のみに使われる用語です。つまり、相続権が第二順位の直系尊属に発生するものです。

 

ですから、被相続人の“父母はいないけれど祖父母はいる”という場合は、当然祖父母に相続権が発生するわけですが、これは代襲相続とは言いません。

 

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養子の代襲相続は?

 

養子についての代襲相続というのは、若干線引きが細かくなっています。

 

養子というのは、親子関係のない者同士を法律上の親子とみなすものです。ですから、基本的には養親の死亡前に養子が亡くなっていれば、養子の子に代襲相続が発生することになります。

 

ただし、“養子縁組をいつ行ったのか”によって、代襲相続が発生するかどうかが変わってきますので注意が必要です。

 

まず養子縁組前に生まれた養子の子の場合、代襲相続は発生しません。一方、養子縁組後に生まれた養子の子の場合は、代襲相続が発生します。

 

例えば、2000年に結婚した夫婦の夫の親、すなわち妻から見たら義親(義理の親)と妻が2005年に養子縁組をしたとします。また、この夫婦の間には2002年に誕生したAと2006年に誕生したBがいるとします。

 

このケースでは、妻が義親よりも先に亡くなり、その後義親の相続が発生すると、子供Aには代襲相続が発生しません。一方、子供Bには代襲相続が発生します。

 

つまり、夫の親(妻の養親)の相続では、養子縁組後に生まれた子Bのみに代襲相続が発生するということです。要するに、義親の相続時に妻が相続するはずだった財産は、子Bが一人で相続するということになるわけですね。

 

ちなみに、このケースでは、あくまでも妻と義親が養子縁組をしているだけですが、もしも夫が親よりも先に亡くなって、その後、親の相続が発生した場合にはどうなるのでしょうか?

 

この場合は、通常通り代襲相続が発生し、夫が相続するはずだった財産を子Aと子Bとで折半することになります。

 

 

2割加算とは?

 

2割加算というのは、納める相続税が2割増しになることを言います。なので、相続税の課税対象になる人だけに関係する制度になります。

 

2割加算の対象になると、例えば納める相続税額が100万円が120万円になるわけですが、それではどのような人がその対象となるのでしょうか?

 

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2割加算の対象になるのは、兄弟姉妹や甥、姪、孫(代襲相続を除く)、血縁関係のない人(内縁の相手や団体)になります。これらの人が相続や遺贈によって財産を手に入れ、相続税の課税対象となるケースでは、相続税が2割増しにされます。

 

 

孫(代襲相続を除く)とは?

 

2割加算の対象となる人で代襲相続でない孫といってもわかりにくいかと思いますので、少し補足説明しておきます。

 

代襲相続でない孫というのは、代襲相続によって孫が相続人となった場合を除くということです。つまり、代襲相続によって孫が相続人となっても、その孫は2割加算の対象にならないということです。

 

ですから、例えば孫と養子縁組をしたら、その孫は2割加算の対象になるということになります。“孫養子は2割加算の対象になる!”と覚えておきましょう。

 

 

孫が相続人となっても2割加算対象外になるケースは?

 

孫に代襲相続が発生するケースとしてはどのようなものがあるのでしょうか?

 

まず被相続人の子が親よりも先に死亡したケースがあります。また、相続廃除や相続欠格により相続権が消滅したケースもあります。

 

このどちらかのケースに該当し、かつ、その相続人に子がいれば、代襲相続によって孫に相続権が移行しますが、2割加算の対象になりません。

 

なお、相続放棄を選択した人には代襲相続は発生しません。この場合、自分と同順位の相続人がいなければ、次順位の相続人に相続権が移行します。

 

養子縁組を行うと、相続時には実子と同じ立場になります。

 

なので、「基礎控除額や非課税枠を増やすことができるのなら孫を養子にしたいけれど、2割加算の対象になるからやめておいたほうがよさそう…」と考えがちです。

 

ですが、2割増しで相続税を支払っても、場合によっては得をすることもあるのです。

 

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2割加算でも得をするケースとは?

 

孫と養子縁組をして、その孫が2割加算の対象になったとしても、結果的に得をする場合というのはどのようなケースなのでしょうか?

 

それでは、具体的に見ていきたいと思います。

 

孫と養子縁組をする最大のメリットと言えば、やはり相続財産を一代飛ばして相続させることができることですよね。

 

例えば、被相続人Aの相続財産が2億円だったとします。それをAの子であるBが全額相続し、その後Bの相続が発生すると、Bの子であるCが相続人となります。Bの相続財産の中には、Aの相続財産が含まれている可能性があります。

 

そうすると、CはBがAから相続した財産だけでなく、B自身が築いてきた財産をも相続することになります。そうなると、Cの相続税の負担は重くなります。

 

 

一方、AがC(孫)と養子縁組をすると・・・

 

Aの相続人は実子Bと孫養子Cとなります。つまり、2億円の相続財産をBとCで1億円ずつ相続することになるわけです。

 

すると、その後のBの相続発生時には、先ほどよりも税負担が1億円分軽くなります。実際、2回の相続で発生する合計相続税額を比べるとよくわかります。

 

孫と養子縁組をしなかった場合には1億80万円、孫と養子縁組をした場合には6,670万円です。その差は約4,000万円にもなります。

 

つまり、孫が負担する相続税額だけを見た場合には養子縁組をしないほうが相続税は安く済みますが、トータルで考えた場合には養子縁組をした方が相続税は安く済むということがわかります。

 

ここでの比較は、子供が1人、孫が1人で、相続した財産にいっさい手を付けず相続を繰り返したと仮定してのものです。ですから、孫との養子縁組が必ずお得というわけではありません。

 

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ただ、相続財産が数億円を超えるようなケースでは、孫との養子縁組で相続税負担が軽くなるというデータもありますのでぜひ参考にしてみて下さい。

 

ということで、“孫との養子縁組で相続の際に損をしてしまった”ということのないように、きちんと専門家にシミュレーションをしてもらってから養子縁組をするかどうか検討するようにして下さい。

 

 

養子縁組の注意点は?

 

孫養子で得するのは、@総資産額が数億円以上で、A相続税の課税対象額から数百万円だけ超えている、というケースでした。

 

では、この2つのケースに該当しない場合には、孫と養子縁組をしてもあまり意味がないのでしょうか?

 

これについては、孫以外と養子縁組をするとなると、また話が変わってきます。あくまでも孫が2割加算となるのは、孫を養子にしたケースのみです。

 

逆に言うと、息子の嫁や婿入りした人と養子縁組する場合には、実子と同じ扱いになるのです。つまり、これらの方と養子縁組した場合には、2割加算の対象にはならないということなのです。

 

また、あなた自身に子供がいない場合でも養子縁組は効果を発揮します。

 

前述のとおり、あなた自身の兄弟姉妹や甥・姪が相続人の場合には、その方は2割加算の対象になります。なので、あなた自身が親よりも先に死亡しない限り、相続権は兄弟姉妹や甥・姪に発生します。

 

ところが、あなたが兄弟姉妹や甥・姪と養子縁組をすれば、第一順位者の相続人になるわけで、それにより2割加算を回避させることが可能になるのです。

 

 

兄弟姉妹との養子縁組の注意点は?

 

ただし、兄弟姉妹との養子縁組の際には“年齢差”に注意が必要です。

 

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年齢差のある兄弟姉妹がいるケースは珍しくありませんから一概には言えませんが、養子縁組をした人があなたよりも先に亡くなる可能性があります。

 

そうなってしまった場合、せっかく2割加算を回避するために養子縁組をしたのに、その相続対策が無意味となってしまいます。

 

ちなみに、養子が自分よりも先に亡くなってしまったとしても養子の子、すなわち兄弟姉妹の子である甥・姪、被相続人から見たら戸籍上の孫に代襲相続が発生するだけなので、2割加算の対象にはならないのでは?と思いがちです。

 

ですが、そうなるとは限らないのです。

 

 

兄弟姉妹の子は2割加算の対象になるの?

 

養子縁組をした兄弟姉妹に代襲相続が発生すると、相続権は養子の子である甥・姪に移ります。こう考えると2割加算を回避することができそうです。

 

基本的には養子縁組をすれば、その養子は相続時には実子と同じ扱いになります。ただし、代襲相続が発生するかどうかは、養子縁組をしたいつ行ったのかによって決まります。

 

つまり、養子縁組をした時期によっては代襲相続が発生しないのです。

 

具体的には、養子縁組後に生まれた養子の子に対しては代襲相続が発生しますが、養子縁組前に生まれた養子の子に対しては代襲相続は発生しません。

 

このケースでは、兄弟姉妹と養子縁組をした時点において、すでにその兄弟姉妹に子供がいれば代襲相続は発生しません。一般的に自分の相続が発生した時のことを考えるのは、ある程度の年齢を重ねてからになるはずです。

 

そう考えると、その時点ですでに兄弟姉妹が結婚して子供がいる可能性は高いですよね。そのような状況で兄弟姉妹と養子縁組をしたとしても、甥や姪には代襲相続が発生しない可能性が高いです。

 

そうなると、自分の相続の時に兄弟姉妹がいなければ、通常の相続時と同様の進め方になるので、第三順位の相続人である兄弟姉妹の代襲者として甥・姪に相続権が発生します。

 

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つまり、甥や姪は2割加算の対象になるということです。

 

人の死がいつ訪れるのか、それは誰にもわかりません。ですから、甥や姪と養子縁組をしても、その人が自分よりも先に亡くなる可能性がないとは言い切れません。

 

ですが、甥や姪と養子縁組をした方が2割加算を避けることができる可能性は高いといえそうです。

 

“養子縁組をすると相続時に控除額や非課税枠が増えるから”という理由だけで養子縁組をしてしまうと、後々後悔する可能性もあります。

 

養子縁組をする際には、それに関する知識を深めて、メリット・デメリット双方をきちんと理解した上で養子縁組をするかどうかを検討するようにして下さい。

 

 

養子縁組で相続人が減ってしまう?

 

養子縁組のメリットは、何といっても相続税の基礎控除やみなし相続財産の非課税枠を増やせることですよね。ところが、場合によっては養子縁組をすることにより、相続権を持つ人(相続人)が減ってしまう可能性があります。

 

養子縁組をすると、養子となった人は相続時には実子と同じ立場になります。つまり、第一順位の相続人となります。この第一順位というところが重要です。

 

自分自身に子供がいれば、実子に加えて養子が相続人となるので、実子が自分より先に亡くならない限り特に問題ありません。

 

一方、自分自身に子供がいない場合に養子縁組をすると、相続人が減るという問題が起きてきます。子供のいない人に相続が起きると、相続権を持つ可能性のある人は、配偶者・両親・兄弟姉妹となります。

 

例えば、相続時にはすでに配偶者や両親は死亡しているとします。このとき、3人の兄弟姉妹が健在、あるいは兄弟姉妹の子供(甥・姪)がいれば、その人に相続権が発生します。

 

なので、相続税の基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人分)となります。

 

ですが、例えば甥と養子縁組をすると甥が第一順位の相続人となるので、第三順位の兄弟姉妹には相続権は発生しません。これは、自分より上順位の相続人がいるからですね。

 

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そうすると、相続税の基礎控除額は3,600万円(3,000万円+600万円×1人分)となります。相続人が兄弟姉妹3人の基礎控除額は4,800万円でした。一方、相続人が養子1人の基礎控除額は3,600万円です。

 

この差は1,200万円(4,800万円−3,600万円)です。

 

つまり、基礎控除額だけを見た場合には、養子縁組をしないで兄弟姉妹が相続人となるケース方がお得ということなのです。

 

兄弟姉妹や甥・姪が相続人となると、2割加算の対象になってしまうという欠点もありますが、控除額が1,200万円も減るメリットのことを考えると検討の余地はありますよね。

 

ということで、養子縁組をするかしないかについては、あなたが置かれている状況を考えて選択するようにしてください。

 

 

特別養子縁組制度とは?

 

養子縁組というのは、親子関係のない人同士に、法律上親子関係を生じさせることを言います。この養子縁組には2種類あります。1つは特別養子縁組、もう1つは普通養子縁組です。

 

まず特別養子縁組というのは、養子が戸籍上の実親との関係を断ち切り、養親のみとの親子関係になることを言います。

 

特別養子縁組では戸籍上も“実子”と記載されますので、養子は養親の姓を名乗ることになります。特別養子縁組は、子供の福祉・利益を図るために設けられた制度です。

 

具体的には、実親が子供を育てることが困難な状況から、子供を守るために用いられる制度になります。ですから、単に「跡取りが欲しいから」というような養親の希望に沿って進めるものではないということですね。

 

特別養子縁組は、実親との関係を断ち切る特殊な縁組方法ですから、養親・養子にも条件が設けられています。

 

まず養親になる人は結婚していなければなりません。また、夫婦そろって養親とならなければなりません。さらに、夫婦のいずれかが25歳以上である必要があり、もう一人の養親も20歳以上である必要があります。

 

一方、養子となる子は6歳以上である必要があり、実父母の同意がなければなりません。

 

ですから、例えば、実父母との連絡がつかないなどの理由によって同意を得られない場合には、特別養子縁組は成立不可となります。

 

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特別養子縁組の手続きは?

 

特別養子縁組の手続きは、まずは家庭裁判所で特別養子縁組の申し立てをします。そして、試験養育期間6ヵ月を経て、その後に家庭裁判所の審判により成立するかどうかが決められます。

 

決定後は、市区町村役場に届け出を提出することによって手続きが完了します。なお、2017年1月からは試験養育期間も育児休業の対象になっています。

 

ということで、特別養子縁組を行う際には、それなりの覚悟が必要になります。どのようなことがあっても自分のこともとして一生責任を持って守り、愛情豊かに育てる覚悟がなければ、特別養子縁組の成立は難しいと思っておいたほうがよいです。

 

 

普通養子縁組とは?

 

普通養子縁組というのは、養子が実親との関係を維持したまま、養親との親子関係も築く制度です。なので、実親と養親の双方に相続権が発生します。

 

また、戸籍には“養子・養女”と記載され、養子は養親の姓を名乗ります。

 

普通養子縁組は特別養子縁組とは違い、適用要件がそれほど厳しくありません。なので、息子の嫁や孫、再婚相手の連れ子と養親縁組をするケースは多いです。

 

養子の年齢には特別制限があるわけではありませんが、養親より年上の人や尊属に該当する人を養子に迎えることはできません。ちなみに、この場合の“尊属”とは直系尊属だけでなく傍系尊属も該当します。

 

ですから、例えば、養親の叔父や叔母が自分より年下であったとして、叔父や叔母は傍系尊属に該当するので養子にすることはできません。

 

さらに、養子が15歳未満の場合には実親の承諾が、未成年者の場合には家庭裁判所の許可が、必要になります。

 

一方、養親については、成人していればたとえ未婚であっても養子を迎え入れることはできます。

 

ただし、夫婦が未成年者を養子にする場合には、双方が養親となる必要があります。また、既婚者が養親・養子になる場合には、自分の配偶者の同意を得なければなりません。

 

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普通養子縁組の手続きは・・・

 

普通養子縁組の手続きは、養親・養子双方の同意のもと、市区町村役場に養子縁組届を提出するだけで完了します。

 

特別養子縁組では、原則として縁組を解消させることはできませんでした。一方、普通養子縁組の場合は、養子が15歳以上であれば、当事者の同意のもと縁組を解消することが可能です。

 

ということで、普通養子縁組は特別養子縁組と比べると複雑な手続きがないので、相続税の基礎控除額やみなし相続財産の非課税枠を増やすために縁組をする人は多いです。

 

注意点を守ったうえで使いこなせば立派な相続税対策になりますので、ぜひ検討してみてください。

 

 

実子と養子の関係は?

 

養子縁組で養子になった人は、第一順位の相続人として、当然に養親の相続人となりますので、相続権を持つことになります。つまり、養親に実施がいる場合には、実子と養子は同等の立場になるということです。

 

養子を迎え入れる人数に制限はありません。なので、何人とでも養子縁組を行うことはできます。

 

しかしながら、相続が起きて基礎控除額などの計算をする際に、養子を全員カウントするとどうなるでしょうか?

 

養子縁組をすればするほど控除額が無限に増えるとなると、たとえ遺産総額が数億円あったとしても、相続税が発生しなくなってしまいます。こうした事態を回避するために、法定相続人をカウントする数には制限が設けられています。

 

具体的には、被相続人に実子がいる場合には養子は1人まで、被相続人に実子がいない場合には養子は2人まで、とされています。

 

つまり、例えば5人と養子縁組をしたとしても、相続時には5人全員が法定相続人としてカウントされるわけではないということです。

 

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養子縁組に人数制限はあるの?

 

とはいえ、特別養子縁組で養子になった人や被相続人の配偶者の実子が、被相続人の養子となっている人については、人数制限は設けられていません。

 

なお、この2つのケース以外にも人数制限が設けられていない養子もいます。

 

ここで重要なのは、人数制限が設けられているのは、相続税の基礎控除額やみなし相続財産の非課税枠を計算するときだけだということです。

 

ですから、相続権が発生する人数に制限が設けられているわけではないということは押さえておいてください。

 

例えば、相続人が被相続人の実子3人の場合、基礎控除は4,800万円(3,000万円+600万円×3人分)となります。

 

これに対して、相続人が被相続人の実子3人+養子2人の場合の起草控除額は5,400万円(3,000万円+600万円×4人分)となります。

 

これは、実子がいる場合には、法定相続人にカウントできる養子は1人だけだからです。

 

このように、あくまでも人数制限が設けられているのは、基礎控除額や非課税枠の計算時のみですから、相続権が発生するのは実子3人と養子2人の5人全員です。

 

相続時に養子の人数制限があると言われると、相続人となれる人数にも制限があると思いがちですが、そうではありませんので注意してください。

 

ということで、相続時には、養子の人数を制限して計算するケースと、養子の人数を制限しないで計算するケースがあるということですね。なので、こうした特徴を利用して相続対策をする人もいるわけです。

 

 

養子縁組の相続対策とは?

 

養子縁組をすると、その養子は相続時に法定相続人のカウントを行うときに人数制限を受けるというのは前述のとおりです。その際、第一順位の相続人としての立場は、養子となった人すべてに発生します。

 

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これはどういうことかというと、養子が多ければ多いほど一人当たりの法定相続分・遺留分が少なくなるということです。なので、養子縁組は“特定の相続人に遺産を渡したくない”というときに活躍するのです。

 

例えば、被相続人の相続人は子供A、B、Cの3人いるけれど、Bには財産を絶対に渡したくないと考えているケースです。

 

このときB以外の相続人AとCの子供、つまり被相続人から見た孫D、E、Fと養子縁組をするとどうなるでしょうか?

 

仮に被相続人の相続財産が6,000万円だったとして、これを遺産分割するとなった場合には、相続人は実子A、B、Cと孫養子D、E、Fとなります。すると、法定相続分は一人当たり1,000万円、遺留分は500万円となります。

 

一方、養子縁組をしないで相続が発生した場合、相続人は実子A、B、Cだけとなりますから、法定相続分は2,000万円、遺留分は1,000万円となります。

 

つまり、養子縁組をした場合としない場合とでは、約2倍の差が生じることになるわけです。

 

とはいえ、必ずしも孫養子D、E、Fに相続財産を渡さなければならないというわけでもありません。実際、法定相続分や遺留分を減らす目的だけで養子縁組をする人もたくさんいますからね。

 

 

相続廃除をすればいいのでは?

 

被相続人が相続人の相続権を剥奪するのが相続廃除です。この相続廃除をすれば問題ないのではと考える人もいます。

 

ですが、この相続廃除の廃除要件は非常に厳しく設定されています。

 

例えば、親の面倒を全く見てこなかったといったような理由のみでは、相続廃除は認められないのです。

 

相続廃除請求をしたけれど受理されなかったというケースでは、養子縁組をすることにより法定相続分や遺留分を減らせます。それにより、最低限度の相続割合を引き下げることが可能になります。

 

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