遺言と相続の関係|有効な遺言書が必要なケースとは?

 

 

遺言相続の関係は?

有効遺言書が必要なケースとは?

 

 

今回は遺言と相続の関係についてのお話です。ちなみに「ゆいごん」という呼び方と「いごん」という呼び方がありますが、どちらも間違いではありません。どちらかといえば、一般的・国語的には「ゆいごん」と呼び、法律的には「いごん」と呼ぶことが多いです。

 

人は必ず亡くなります。そして亡くなった時点で相続が発生します。相続とは亡くなった方の親族、これは法律で決まっているのですが、その方たちが亡くなった方のすべての財産の一切を引き継ぐことをいいます。

 

その時に遺言書があれば、原則的にはそのとおりに、なければ相続人全員の話し合いで財産が引き継がれます。

 

例えば、亡くなった人のことを「被相続人」と呼びますが、被相続人の死亡が確認され、通夜、葬儀、死亡届の提出が終わった後で遺言書の有無を確認します。なお、一部、葬儀の前から遺言書を探す人がいるかもしれません。

 

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遺言書がある場合は?

 

遺言書がある場合、公正証書遺言以外は家庭裁判所で検認という手続きが必要になります。

 

この検認によって遺言書が法律どおりに形式を整えているかどうかなどを確認して、形式的に有効である場合には、原則としてはその遺言どおりの分割ということになります。

 

一方、検認で遺言書が形式的に法律どおりに書かれていない場合などは無効とされ、遺言がない場合と同じになって遺産の分割協議、つまり相続人全員で話し合いとなります。

 

この遺産分割協議には相続人全員の同意が必要です。もちろん、上手く成立すれば問題ないのですが、1人でも反対する人がいれば成立しません。実際、相続発生の1割以上で話し合いが付かずに裁判で争うという状況です。

 

私の過去の経験からすると、話し合いが不調に終わるのは「あと5万円よこせ」とか「あいつと同じ金額は許せない」とか、感情的になるケースが多いです。他人から見ると他愛もないことなのですが、当事者にとってはメンツをかけた争いというケースをよく見てきました。

 

 

有効な遺言書とは?

 

遺言書は亡くなった人の最後のメッセージです。また、肉親による争いを防ぐ目的もあります。遺言書とは「相続」を「争続」にしないために書くものです。しかしながら、そのためには“有効な”遺言書を残さなければなりません。

 

有効な遺言書とは何かというと、法律に書かれている形式を守って、不備のないように書いた遺言書ということになります。

 

日本では遺言書というと「縁起でもない」という人もいますが、もしもの時のことを考えて準備するというのは、欧米人よりも誠実な日本人の方が性に合っていると思います。

 

それから「うちは残せるような財産がないから、そんなものは必要ない」という人もいますが、これも間違いです。銀行預金や電話加入権など、こういったものの名義を誰にするか、これは誰にでも起こり得ることです。

 

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また、先ほどお話したように争いになるのは、残す額が多い少ないばかりではありません。「あと5万」とか「あいつよりも少しでも多く」とか、その程度のことが多いからです。

 

そして、仲が良かった家族なのに相続を境に険悪な関係になってしまう、そういったケースを数多く見てきました。そうしないためにも遺言書を残す意味はあります。財産の多い少ないだけではありません。

 

 

遺言執行者が必要?

 

せっかく遺言書を残したのに、遺言執行者を指定しなかったために、上手く事が運ばなかったというケースが多くあります。

 

遺言執行者というのは、その名のとおり、遺言を遺言書に書いてあるとおりに分配を行う担当者のような存在です。ですから、遺言執行者は必ず指定するようにしてください。

 

 

遺言が必要なケースとは?

 

それでは、一般的に遺言が必要なケースをみていきます。

 

まず1つ目は、法定相続人以外の者に財産を与えたい場合です。法定相続人とは、法律で決まっている相続人のことで、配偶者、子、親、兄弟です。それ以外の人に相続をさせることはできません。ですが、人間ですから次のようなことを考えたりしますよね。

 

例えば「献身的な介護をしてくれた長男のお嫁さんに少し残したい」とか、あるいは「ヘルパーさんに感謝の気持ちを残したい」とかです。このような場合、相続権のない人には遺言書に書かれていないと残すことができません。

 

ちなみに、この場合は相続とは言わず「遺贈」と言います。生前に口約束をしていてもダメです。

 

 

2つ目〜4つ目は?

 

2つ目は、子供がいない場合です。子供がいない場合は、その親や場合によっては亡くなった人の兄弟姉妹が相続します。寄付をしたいという場合は、遺言を残さないと実現しません。

 

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3つ目は、相続人がいない場合です。そのままですと、共有物以外は原則として国に没収されてしまいます。4つ目は、相続人同士の仲が悪い場合です。先ほどお話したように、今は仲が良くても相続が始まった途端に仲が悪くなるというケースもあります。

 

 

5つ目〜7つ目は?

 

5つ目は、事業を特定の者に承継させたい場合です。この場合は、争いが続くと会社の経営に支障をきたすおそれがあります。また、一番経営に適した人材がいたとしても、社長がそう思ったとしても、その人が次期経営者に選任されるかどうかはわかりませんからね。

 

6つ目は、内縁の夫または妻がいる場合です。つまり、婚姻届けを出していない夫婦のことです。戸籍に配偶者として記載されていないと相続はできません。なので、資産を残したい場合は遺言を残す必要があります。つまり、遺言書を書く必要があるということです。

 

7つ目は、分割できない財産がある場合です。例えば、相続人が妻と子供3人の合計4人なのに、残す財産は自宅1軒のみというケースです。

 

こうしたケースの場合には、代償分割という方法があったり、あるいは共有するという方法もあります。

 

ですが、妻の面倒をみることを条件に、妻と一番仲の良い子供にすべて相続させて、全財産を子供1人に相続させて妻の面倒をみてもらう、というようにするとスムーズに進みます。

 

 

8つ目〜10個目は?

 

8つ目は、ペットに遺産を残したい場合です。昔アメリカで大富豪が、自分の飼っている猫に数十億円の遺産を相続させる遺言を残したことがありましたよね。ニュースで見た方もいると思います。これはどのようにしたのかというと、負担付贈与という方法を取ります。

 

負担付贈与なら、自分の大事なペットの面倒をみることを条件にして、相続人の1人に法定相続分よりも多く相続させたり、あるいは全く他人に引き取らせるということも可能になります。

 

9つ目は、相続人の中に相続させたくない者がいる場合です。これは認められるかどうかかなり微妙です。

 

できれば存命中に廃除という裁判を起こしておいた方がいいと思うのですが、遺言で相続させない、廃除することも可能です。この場合は、理由を明確にして証拠の書類も残しておかないと、認められない可能性が高くなります。

 

10個目は、未成年者の子供がいる場合です。もし遺言書を残さなかった場合、基本的には遺産を分割するための協議(遺産分割協議)で、子供の人数分の特別代理人というものを家庭裁判所で選任してもらわなければならなくなります。

 

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