相続と遺贈の違い|遺言で不倫相手に遺贈するのは有効?

 

 

相続遺贈違いとは?

遺言で不倫相手に遺贈するのは有効?

 

 

遺贈と相続はとても似ています。どなたかが亡くなって、その人が亡くなったことを契機として財産が誰かに移るからです。そういう意味では、遺贈と相続は似ています。では、遺贈と相続では何が違うのか、ここでは2つのポイントを押さえて下さい。

 

まず1つは、相続というのは、相続人に対して財産が移動します。相続人、配偶者、親、子供、兄弟です。順番はありますが、相続人に対して移動します。

 

それに対して、遺贈というのは、相続人ではない人、相続人ではない第三者に財産を譲りたいときに使います。

 

2つ目は、遺贈は遺言でしかできないということです。遺言の中で誰かに遺贈するということを定めない限り、第三者に財産を残すことはできません。

 

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どのような場合に遺贈を使うのでしょうか?

 

遺贈を使う典型例として、事実婚夫婦のケースがあります。何十年一緒に暮らしていたとしても、戸籍上届出をしていなければお互いに相続することができません。

 

この場合、遺言の中で「財産を遺贈する」という遺言書をそれぞれが作ることによって、築いてきた財産を相手に残すことができます。

 

また、孫に財産を残したいケースや、お世話になった施設や会社に対して財産を残したいというケースもあります。こうしたケースでも遺贈が使えます。それから、同居している長男の嫁というケースもあります。

 

 

同居している長男の嫁に遺贈するとは?

 

例えば、ずっと長男夫婦と同居していたのだけれど、長男は不幸なことに先に亡くなってしまって、今はお嫁さんと一緒に暮らしているというようなケースです。

 

この場合、お嫁さんというのは相続人ではありませんから、そのまま放っておくと、例えば次男が遠くにいる場合、家は次男のものになってしまいます。

 

そうすると、お嫁さんは住むところがなくなってしまって気の毒ですよね。そういった場合に遺贈を使うと、せめて住むところはお嫁さんに残してあげることができるのです。

 

 

包括遺贈と特定遺贈とは?

 

遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。包括遺贈というのは、割合を決めるものです。例えば、長男のお嫁さんに半分、次男に半分というように割合を決めて、あとは内容を2人で話し合って決めてもらうのが包括遺贈です。

 

特定遺贈というのは、「自宅だけ、住むところだけはお嫁さんに確保してあげるよ」という場合に、「自宅をお嫁さんに遺贈する」というように、特定の財産を遺贈する方法です。

 

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遺言で不倫相手に遺贈するのは有効?

 

今回は、不倫相手に対する遺言書による遺贈についてのお話です。不倫相手への遺贈は有効なのでしょうか?

 

遺言というのは、亡くなっていく故人の最後の意思ですから、通常はどのような遺言であっても有効となるのが原則です。

 

ただし、遺言に限らず法律行為は公序良俗に反してはいけないという決まりがあります。なので、あまりにも非常識な、そんな遺言はないだろうというような遺言を書いた場合には、無効になる可能性があります。

 

ここで、不倫相手に対する遺贈というのが有効かどうかが問題になります。

 

不倫行為というのは、民法では離婚事由になります。また、不法行為として慰謝料請求の対象になる行為です。そういった行為をする相手方に対する遺贈というのが、公序良俗に反しないかというのは、やはり問題になります。

 

この点については、参考にすべき最高裁判例があります。

 

少し古い判例になりますが、最高裁昭和61年11月20日判決が重要な先例になっていますので紹介します。この判例は、7年間に渡り不倫行為をしている事案でした。

 

このような場合、一体どのように遺言書の有効性を判断するのかというと、4つのポイントがあります。

 

1つは、不倫行為が継続していることで夫婦関係が破綻していたかどうかです。2つ目は、不倫行為の期間です。

 

3つ目は、財産を遺贈することによって、奥さんやお子さんが非常に辛い立場に置かれないかです。4つ目は、その遺贈が不倫関係を維持するためのものかどうかということです。

 

以上4つの点がポイントになるとされています。

 

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上記の判例では、7年間に渡り別居していたということで、夫婦関係はある程度破綻しているとされました。一方、不倫相手と7年間一緒に住んでいるということで、その女性も不倫をしている夫との間で生活の基盤ができてしまっているという事情がありました。

 

また、不倫関係を維持するため、この不倫を続けるために遺贈しているものではないと判断されています。あくまでも新たな愛人の生活の維持ということが目的だとされたのです。

 

そしてさらに重要なのは、この判例では、全財産をその不倫相手に贈与するというものではなくて、財産を3分の1ずつ分けて、奥さんに3分の1、不倫相手に3分の1、子供に3分の1ということになりました。

 

当時は奥さんの相続分というのは3分の1でしたから、結果的に奥さんの相続分は侵害されていないということも、この判断の重要なポイントになったのではないかと思われます。

 

このように、この判例では、不倫相手に対する遺贈を有効としています。

 

とはいえ、非常に微妙な問題とも言えます。まさにケースバイケースで具体的に判断されなければならない問題だからです。ですから、不倫相手に対する遺贈があった、あるいは遺贈するというときには、一度法的観点から弁護士さんに相談されることをおすすめします。

 

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