遺言執行者に財産の遺贈先を決めてもらう遺言書は有効?

 

 

遺言執行者に財産の遺贈先を決めてもらう

遺言書は有効なの?

 

 

遺言執行者というのは、遺言の内容を実現する人です。遺言の中で「遺言執行者○○」というように、特定の人を決めることができます。

 

通常は、遺言執行者を決めておかなければ、相続人がみんなで手分けして色々な手続きをすることになるわけですが、遺言執行者を遺言の中で決めておけば、その人が代表者になって、基本的にはすべての手続きをやっていくことになります。

 

というように、遺言執行者とは遺言の内容を実現していく人になります。

 

ですから、「できればこの人に頼みたい」という人がいれば、それは相続人の中でもいいですし、全くの第三者、弁護士や司法書士、行政書士など専門家でも構いません。

 

「遺言執行者になって下さい」というお願いをして、遺言書の文章の中に遺言執行者として名前を入れておきます。

 

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ちなみに、第三者の場合は、できれば相続などの法律に詳しい方がいいです。ただ、生身の人間ですから、その時はどうなっているのかわかりませんので、その場合はもしその人ができなければ別の人がというように決めておくことも必要かもしれません。

 

 

遺言執行者に財産の遺贈先を決めてもらう遺言書は有効?

 

次に、遺言の解釈で、遺言者が遺言書で具体的に「誰に財産を遺贈するのか」ということを書ずに、遺言執行者の判断に委ねることはできるのか、そういった遺言書は有効なのかというお話です。

 

通常、遺言書には「誰に財産を遺贈する」ということをきちんと書きます。一方で、抽象的に「公共の利益になる団体」という枠の中で、遺言執行者に財産をもらう人の選定を委ねるということは許されるのでしょうか?

 

これについては、最高裁平成3年4月19日判決が参考になります。この判決では、公益目的の団体に遺贈する場合、その団体の選定を遺言執行者に任せることも有効であるとしています。

 

遺言書の解釈というのは、遺言の文言のみで決めるものではなくて、その他の事情も併せて考慮して、被相続人がどのような意思であったのかということを認定することになっています。

 

このケースでは、被相続人は遺言執行者を自宅に何度か呼んで、そういった話をしていたということもあって、公共の団体、例えば地方公共団体あるいは学校法人、社会福祉法人といった団体に遺贈するということが十分に理解できる、そういった必要性もあるということで上記のような判断になっています。

 

また、公共の目的という枠の中であれば、遺言執行者が何か権限を濫用するという危険も少ないということも併せて考慮されています。

 

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このように判例においては、公共の目的という枠の中では、遺言執行者に団体の選定等を委ねることを認めています。

 

ですから、そういった枠がない場合、例えば、「無限定に遺言執行者の判断に任せる」という遺言が有効かどうかについては、難しい面があると思われます。

 

 

遺言執行者が訴訟の当事者になる場合とは?

 

次に、遺言執行者と訴訟のお話です。遺言執行者というのは、遺言書の内容を実現するための人です。

 

例えば、遺言書の中で不動産の登記を誰かに移すというような作業が必要になった時に、遺言執行者がそのような行為を行ったりします。この遺言執行者ですが、裁判、訴訟の当事者になるということもよくあります。

 

どのような時に当事者になるのかというと、例えば、遺言書の中で第三者に渡すという遺贈した不動産の抹消登記をする場合です。

 

遺言の中で遺贈して不動産を渡すとしてあるのに、相続人などが登記をしてしまった時には、遺言執行者はその登記を抹消して遺贈の実現をするわけですが、そのようなときに起こる裁判です。

 

このような裁判においては、遺言執行者がその裁判の当事者になります。また、明渡し請求訴訟もそうです。例えば、遺贈の対象となった不動産の明渡しの請求をする裁判なども、遺言執行者が当事者になります。

 

さらに、遺言がそもそも無効である、そのような主張をされた時に、遺言無効の確認訴訟については、遺言執行者が当事者になるケースもあります。

 

それから、遺留分の減殺請求といって、遺言の内容があまりにも偏りすぎていて相続人から遺留分の請求がされる、「最低限取り得る権利があるんだ」と主張されるときに、遺言執行者が遺留分の減殺請求の被告になるケースもあります。

 

このように遺言執行者というのは、訴訟の当事者になるということもありますので、その点も考えて遺言書を作成する時、遺言執行者の選任をする時には、意識をしておくようにして下さい。

 

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