法人化すると、不動産収入とFXの損失を損益通算できる?

 

法人化すれば、不動産収入と

FXの損失を損益通算できるの?

 

次のようなケースで考えてみます。

 

■会社員であるが、年収は最高税率が適用されている。
■本年は保有している区分所有マンションからの不動産収入が年間600万円程度ある。
■資産管理会社を設立し、不動産とFXを事業目的として、専業主婦の妻を代表として給与を支払う予定である。
■不動産収入とFXの損失との損益通算はできるのか?

 

不動産収入とFXの損失は

損益通算できるのか?

 

まず、現状ですと、家賃は所有権を保有している個人の所得になるわけです。これが法人になると、管理料を得ることになるわけですが、その管理料というのは、ご本人の所得の計算上は、不動産所得の必要経費にすることが可能です。

 

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そして、上記のケースでは、法人が管理料に近い金額を妻の給与として支払い、損益をトントン程度にして、節税するということですが、それに加えてさらに、所得税ではできない不動産収入とFXの損失との損益通算したいということで、これが可能かどうかということですよね?

 

もしこうすることが可能であれば、所得をご本人と妻とで分散することができますので、ご本人と妻との所得税の税率の差額分が節税できるわけですから…。

 

さて、法人の場合には、所得税のように各所得金額に分類して税額を計算していくという概念自体がないのですよね。つまり、全てを一括して計算することが当然なのですね。なので、不動産管理にかかる利益とFXの損失も当然に損益通算することが可能です。

 

ちなみに、個人事業の場合ですと、不動産の規模が事業的かどうかということが問われましたが、法人の場合にはそういった概念はありません。

 

 

FXで利益が出た場合について

 

上記で述べたように、法人化して不動産収入とFXの損失を合算することはできるわけですが、FXで利益が出た場合には、損得は、また変わってくると思われます。

 

というのは、FXで利益が出た場合、その利益に対して、法人税だけでなく、法人事業税や法人復興特別税、法人都道府県民税、法人市町村民税などが課されるからです。

 

おおよその実効税率は40〜45%程度になるでしょうから、それが個人のときと比較して有利になるかどうかを考えなくてはならないからですね。

 

FXは個人でしたら申告分離課税20%(地方税含む)ですが、法人事業では総合課税で地方税含め約40〜45%になりますからね。

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管理会社の主な必要経費は役員報酬になるでしょうが、たとえFX事業で利益が増えたとしても、年度の途中で役員報酬を上げたりすると利益操作とみなされて、損金に算入できないケースもありますし…。

 

また、法人にした場合は、登記にまつわる費用もかかります。登記は法人を設立したときだけでなく、その後も役員変更や法人の移動があった際にはその都度必要になります。

 

さらに、法人税の申告書の作成も個人の時のように自分で行うにはハードルが高いですから、税理士に依頼することになると思います。そうなりますと、税理士の報酬も必要になってきますよね。

 

こうした法人を維持していく上でかかる費用のことを考えますと、一概に法人化するのが有利になるとも言えませんので、その辺のところも勘案して決めることが大切だと思います。

 

 

管理料の設定について

 

法人化することには何の問題もありませんが、妻に支払う管理料の設定にはかなりの注意が必要になります。というのは、所得税法第157条の「同族会社の行為又は計算の否認」というものがあるからですね。

 

国税不服審判所のウェブサイト(http://www.kfs.go.jp/service/MP/02/1001000000.html)の事例を見ていただくとわかりやすいですね。

 

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そこに、過大な不動産管理料につき所得税法第157条を適用して否認した更正は適法であるとした事例(平成元年7月5日裁決)がありますので。

 

つまり、管理料については、巷の噂で家賃収入の○○%なら大丈夫だなどと言われることがありますが、実際のところは、調査が入って是認されるのは厳しいのではないかと思われます。

 

そもそも、不動産の管理について、他の不動産会社に丸投げしているようなケースは、実体さえないということになりますしね。

 

管理料を妻が受け取るということであれば、管理の仕事内容を詳細に設定して、まずは実体があることが必要です。その上で、それに対する適正な管理料を設定するわけです。

 

さすがにそこまできちんとやっていていれば、妻への管理料が過大だと判断されても、全額を否認されることはないと思います。

 

ちなみに、もしも妻に支払っている管理料(給料)が過大であると否認された場合には、その部分について、延滞税やら延滞金などを支払うことになりますので、法人化する際には、そういったリスクも覚悟しておくことが大切かもしれません。

 

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