相続人が認知症・行方不明なら遺言書を!
不在者財産管理人不要の遺産相続対策!
相続の中でご本人が亡くなった場合、例えば認知症などによって、もし相続人の中に自分の意思をはっきり表示できない人がいた場合は、相続人を交えてのみんなでの協議というのはなかなか難しいことになります。
その場合には、やはり遺言書によって、どの人にはどの財産をどれだけとしっかり表示しておけば、この協議はやらなくても済みます。そうすれば、協議で意思表示をする必要もなくなります。
ということで、相続人に認知症などの方がいる場合には、遺言書ではっきり分け方を明示しておくと後々の手間が省けます。
相続人に認知症の人がいる場合は
遺言書を作成した方がいいの?
遺言書を作成した方がよいケースとして、相続人間の話し合いができない場合があげられます。
そして、その相続人間の話し合いができないというのは、事実上仲が悪くてできないとか、行方不明者がいるからできないとか、そういった場合もありますが、別のケースもあります。
例えば、奥さんが認知症になっているようなケースです。
相続人が認知症になっているような場合は、基本的にはその人が単独で遺産の手続きをすることができませんので、後々の手続きがかなり複雑になってしまいます。こうしたことにならないためにも、できるだけ遺言書を作成することをおすすめします。
相続人が認知症うや行方不明だと
銀行預金は引き出せないの?
遺言書というのは、相続が発生したらもめごとやトラブルが起きそうな場合にだけ備えて作成すべきものではありません。というのは、相続人がどれだけ仲が良くても、遺言書を作成しておかないと後々手続きが面倒になるケースが2つあるからです。
1つ目は、相続人のうちの1人が認知症であるケースです。2つ目は、相続人の中に行方不明者がいる場合です。
例えば、夫婦と長男、長女、次男の5人家族のケースで考えてみます。父が亡くなった時に、すでに母は認知症で、次男は長年家を出たまま帰ってこず今現在もどこにいるのか行方不明という場合です。
父が亡くなれば、父の遺産について、誰がどれだけ相続するのか、遺産分割協議をする必要があります。
ただ、父名義のお金を引き出そうにも、遺産分割協議をするためには、相続人全員の実印でハンを押した書類を銀行に提出しないと、預金は引き出せないようになっています。
この遺産分割協議ですが、そもそも母が認知症の場合には協議に参加することができません。
当然、行方不明の次男も同じです。きっと父親の死亡も知らないでしょうから、協議に参加することはできないでしょう。つまり、銀行の預金が引き出せないばかりでなく、父名義の不動産の名義書き換え、相続登記さえもできないのです。
では、どうしたらいいのでしょうか?
認知症の母の場合は、成年後見人を付けて、母の代わりに後見人が遺産分割協議に参加すれば問題ありません。
一方の行方不明になっている次男については、不在者財産管理人を付けて、次男の代わりに遺産分割協議に参加すれば協議をすることは可能です。
というと、「なんだ、簡単じゃない、わざわざ遺言書なんて書く必要ないじゃない」と思われるかもしれません。ですが、この成年後見人と不在者財産管理人というのは、非常に面倒な手続きがいるのです。
両方とも、家庭裁判所に申立てをして書類を提出して、母には後見人を付けてもらわないといけませんし、次男には不在者財産管理人を選任して欲しいと申立てをしなければなりません。
当然、申立費用はかかります。また、申立てをすればすぐに選任されるというわけでもありません。時間もお金もかかるし、手続きも本当に面倒なのです。
さらに、無事に成年後見人と不在者財産管理人が選任され、母の代わりに後見人が、行方不明の次男の代わりに不在者財産管理人が、遺産分割協議に参加したとしても、協議の内容では2人に関しては、最低限度、つまり法定相続分は確保して遺産分割協議を成立させなければなりません。
このケースでしたら、母の分は亡くなった父の財産の2分の1を確保し、次男は子供なので2分の1を3等分した6分の1相当の資産を確保するような協議を成立させる必要があるのです。
後見人は2分の1の財産を管理していき、不在者財産管理人も次男が相続した6分の1相当の資産を基本的にはずっと管理していきます。
では、これら後見人や管理人はいつ終了するのでしょうか?
高齢者の場合、認知症が回復するというのはほぼ見込めませんから、母が亡くなるまで後見人は選任され続けます。また、不在者財産管理人は、行方不明者である次男の生死がわかるまで管理人として財産を管理することになります。
繰り返しになりますが、これには本当に大変な手続きが必要になります。ですが、この大変な手続きに対して、1つだけ解決方法があります。それが遺言書なのです。
相続人が認知症・行方不明なら遺言書を!
不在者財産管理人不要の遺産相続対策!まとめ
父が生前元気なうちに、「自分が死んだ時に、妻である母が認知症、長年連絡が取れない行方不明の次男がいる、これでは残された2人の子供が相続手続きで苦労するな」と思ったら、遺言書で「長男と長女に財産を相続させる」とさえ書いておけば、成年後見人を付ける必要もありませんし、不在者財産管理人を選任する必要もありません。
母の面倒は長男と長女が見てくれるのなら、半分ずつ相続させるのでもいいですし、どちらかが少し多目の割合の遺言書を残しても構いません。
遺言書さえあれば、相続手続きは遺産分割協議をすることなく、遺言書に基づいて手続きがとられます。つまり、遺言書があれば遺産分割をする必要がないのです。
成年後見人も不在者財産管理人も選任することが不要なので、スムーズに手続きをとって、預貯金を解約して出金することができるようになるのです。
遺言書はもめごとやトラブルを回避するためだけのものではありません。遺言書は、残された家族が安心して円満にスムーズに、相続手続きを進めていくために、大きな力を発揮してくれます。
ということで、相続人が認知症や行方不明だと、銀行預金の解約・出金ができませんので、生前に遺言書を必ず作成しておくことをおすすめします。