特別受益の評価時期は?借地権は特別受益に該当するの?

 

 

特別受益評価時期は?

借地権は特別受益に該当するの?

 

 

今回は特別受益の評価時期についてのお話です。特別受益というのは、遺贈や生前贈与で相続人間に不公平な財産分与がなされたときに、その是正を図るという制度です。

 

また「特別受益の持戻し」といって、もらってしまったものを遺産の前渡しであると評価をして、その分あらかじめもらったものとして、遺産分割時にはもらえる部分が減るという、そのような制度になっています。

 

この特別受益の主張をしていく中で生前贈与がされているときには、その生前贈与でもらった財産をどのように評価するのか、どの時期で評価をするのか、ということが争われることがあります。

 

つまり、生前贈与をした後に死亡時までかなりの期間があって、また死亡してからも遺産分割をするまでにはかなりの期間があるというようなときに、受け取った財産の価値がかなり変動するということもあります。

 

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不動産とか株とか、そのような財産の価値が変動するときに、どの時点を評価時期とすべきかというところで争われたりします。

 

死亡のときに相続が開始されるので、相続開始時期なのか遺産分割時期なのか、あるいは生前贈与で受益を受けたときなのか、というところが争われます。

 

 

事例で検討!

 

例えば、生前贈与時に1,000万円の評価額である不動産をもらったという場合です。

 

死亡相続開始時には2,000万円になっていた、あるいは遺産分割時には3,000万円になっていたときに、これをもらった相続人は「いくらもらったと評価すべきか」というところが争われることになるのです。

 

つまり、相続のときにみなし相続財産ということで、死亡時に被相続人がもっていた財産に、プラス生前贈与の相続人が受けた金額、これがみなし相続財産と評価されますので、それぞれの相続人がいくらもらえるのかというところで、この特別受益の贈与額をいくらにするのかというところが争われるのです。

 

この点について通説や判例は、「相続開始時期にこの時点のものを評価すべき」という考え方に立っています。

 

これについては、民法の条文が「相続の開始の時点」という言葉を使っていることや、仮に遺産分割の時点だとすると、その話し合いをしているときに評価をして、さらにその分割の時期が遅れると変わっていくということになり変動することから、相続開始時点で固定すべきではないかという考え方のようです。

 

これに対して、遺産分割時点で判断すべきだという有力な考え方もありますが、基本的に実務では通説・判例の相続開始時点で考えるのが主流となっています。

 

ちなみに、生前贈与の受益を受けた時点という考え方がないわけではありませんが少数派です。なので、それを実際にそれを主張していくというのは現実的ではないと思います。

 

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このように、特別受益の評価時期について争われるケースがありますが、基本的には相続開始時点ということになります。なので、財産価額の変動、評価額が変動しているようなケースについては頭に入れておいた方がよいと思います。

 

 

借地権は特別受益に該当するの?

 

続いて、借地権と特別受益についてのお話です。特別受益というのは何かというと、相続の遺産分割のときに問題になったりするものです。

 

被相続人(亡くなった人)が相続人の一人に対して生前に贈与をしているなど、そのような偏った財産の振り分けをしているときに、遺産分割の際にはその生前贈与の分を戻して、公平に分配しようという制度になっています。

 

この特別受益については生前贈与と同様に、借地権を設定しているようなときにそれが問題にされたりします。

 

 

どのようなケースかというと・・・

 

例えば、被相続人が父だとして、相続人である子供の一人に対して、自分の土地上に家を建てさせて借地権の設定をさせていた、その際、特に対価を得ていないというようなケースです。

 

このようなときに、この借地権を設定したことが特別受益として問題にならないかということです。借地権設定というのは、通常かなり強い権利になります。なので、この父の土地に関しては制約がかなり出てしまうことになります。

 

ちなみに、そのような借地権に関しては、都心などでは土地の価値の6割以上のものを持っていると言われています。場所によっては7割と認定されるケースもあります。

 

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そのような価値のある借地権ですから、通常ですと第三者に借地権設定をするときには多額の権利金を入れたりします。

 

ですから、そのような対価がないのに借地権を設定しているということになると、無償で借地権を設定させたということで、土地の6割以上の価値を無償であげたという認定がされやすくなります。つまり、特別受益として判断されることになるのです。

 

 

借地権を譲渡した場合は?

 

このように、借地権を無償で設定させたケースのほかに、借地権自体を譲渡したことで特別受益になると判断された審判例もあります。

 

例えば、第三者の土地上に父親が借地権付きの建物を持っていたというようなケースです。つまり、この建物を壊して、新たに相続人のある1人の子供に対して家を建てさせたというようなケースです。

 

このような場合、この子供は借地権付きの建物を持っているということになりますので、借地権を譲渡した形になります。

 

このようなときに、父から子に対して、父と子の間でお金の授受がないとすると、借地権を無償で譲渡した、つまり贈与したと認定されやすくなります。このような事実認定をした上で、借地権の贈与があったとして特別受益と判断した審判例もあります。

 

借地権と特別受益については、このような点を押さえておくとよいと思います。相続の際に特別受益を争うというときには、このような借地権絡みを主張しないと損をしてしまうケースもあります。しっかり主張すべきところは主張しておくことをおすすめします。

 

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