遺産分割協議前に預金の払い戻しや不動産の売却はできるの?
次に、「遺産分割協議の前に預金の払い戻しはできるのかどうか」についてのお話です。
遺産である預貯金については、不動産とは違って分けることのできる財産ですから、法定相続人は自分の法定相続分だけ先に請求するということは、法律的にはできることになっています。
しかしながら、現実的には金融機関では応じてくれないケースが多いです。
なぜかというと、もしかしたら遺言書によって、相続人以外の他の人に譲ることが決まっていたり、という可能性があるからです。金融機関としては、できるだけリスクを抑えたいという思いがあるからなのです。
金融機関によっては、葬儀費用分とか50万円以下なら下ろすことができるなど、条件付きで払い戻しを認めてくれるところもあります。なお、詳細については、金融機関の窓口に問い合わせてみて下さい。
遺産分割協議前に不動産は売却できる?
「遺産分割協議をする前に、先に不動産を売ってしまいたいのですが、その場合はどうすればいいのでしょうか?」こういう相談を受けたことがあります。
まず不動産を売るためには、その不動産の持ち主が実際今生きている人に名義変更しておく必要があります。
もし相続人の一人に名義変更をして不動産を売って、そのお金を兄弟で分けるとしても、まずはその不動産を相続人一人のものにしなければなりません。なので、その時点で遺産分割協議が必要になってきます。
もし遺産分割協議をしないで不動産を売ろうとすると、その不動産を相続人全員の共同名義にしなければなりません。そうなってくると、売る時には、相続人全員の印鑑証明書が必要になってしまいますので、結局同じ手間がかかってしまうということになります。
ということで、不動産を先に売るにしても後に売るにしても、どうしても遺産分割協議というのは必要になってきます。後に不動産を売るということも含めて、遺産分割協議書を作成されることをおすすめします。
遺産分割協議とは?
相続が始まると、相続税の申告期限は10ヵ月以内ですが、その中で一番のメインイベントが遺産分割協議になります。
遺言書がある場合はその遺言書に従いますが、遺言書がない場合には相続人同士で遺産をどう分けるかを話し合って決めなくてはいけません。そして、この遺産分割協議は全員一致が原則です。多数決ということではダメなんです。だから大変なんですね。
また、たとえ遺言書があっても、その遺言書に書いてあることがどうも色々と不都合なことがあるということで、相続人同士が話し合いをして、「お父さんあるいはお母さんの意思はこいうことなんだけれど、やっぱり将来のことを色々考えたらこういうふうに私たちは分けた方がいいんじゃないの」ということで、相続人同士の話し合いがまとまれば、全員の意思の確認ができれば、これは遺言書があっても相続人がこういうふうに分けましょうといった内容が優先されます。
つまり、遺言書がすべてということではないということです。
遺産分割協議がまとまらない場合は?
10ヵ月以内に遺産分割協議をやらなければいけないわけですが、これがまとまらないときはどうなるのかということです。
その場合は、相続財産を法定相続人が法定相続分どおりに分けたと仮定して、一旦申告書を提出して、その法定相続分に応じた相続税をそれぞれの相続人が納めるということになっています。
つまり、本来はほんの少ししか財産をもらわないということに納得した相続人でも、一旦は法定相続分で税金を納めなければならないということになります。
そういうこともありますから、遺産分割協議はできるだけ10ヵ月以内にまとめてしまうというのが重要になってきます。
遺産分割協議の注意点は?
相続の実際の遺産の分配方法や遺産分割協議に当たっての一般的な注意点のお話です。
相続の分配についてまず大事なのは、相続人を確定させることです。亡くなった人の相続人が誰なのか、これは戸籍調査などを先行して行う必要があります。
場合によっては認知など、亡くなった人に実は認知していたお子さんがいたような場合もありますので注意が必要です。
次に大事なのが遺産の全容の把握です。具体的には、遺産目録という目録を作成していくことになります。亡くなった人の預貯金、不動産、株式などです。そして、上場株式や非上場株式の評価なども問題になります。
この相続人の確定と遺産の確定をして初めて、遺産分割協議という段階に進むことができます。この最初の段階で、なかなかうまく進まない場合は、一度弁護士など専門家に相談されるとよいと思います。