なぜ死亡保険金の受取人を
法定相続人や複数人にしてはいけないの?
今回は相続対策として生命保険が非常に役に立つというお話です。
例えば金融機関に預けている預貯金は、名義人が亡くなられた途端に、どこの金融機関も1円も払い戻ししてくれなくなります。実際、口座が凍結されてしまいますので、1円も引き出せなくて困るわけです。
そんな時に預貯金の一部を保険に代えておくと、すぐに受取人が連絡すれば引き出すことが可能です。
また、預貯金よりも保険の方が税金が安くなるメリットもあります。ちなみに、あなたがすでに何かの保険に加入しているのなら、保険金の受取人をしっかり確認しておいて下さい。
というのは、例えば死亡保険金の受取人の欄が“法定相続人”となっていたり、1,000万円の保険金を2人で50%ずつ分けるとか、4人で25%ずつ受け取るとか、そういった契約になっている場合、相続が発生したときにスムーズに受取りができなくなってしまう可能性があるからです。
なので、受取人についてはしっかり確認するようにして下さい。
なぜ死亡保険金の受取人を法定相続人にしてはいけないの?
具体的にどういうことかというと、もし受取人が1人だったら、その人が保険会社に連絡をすればすぐに保険金は支払われますので、すぐに必要な費用、葬式代やそれに関する食事代、弁当代など、そういったものは直ちに準備できます。
ですが、例えば受取人が“法定相続人”となっていると、誰が法定相続人なのかというのを保険会社に証明しないといけなくなります。
そうすると、戸籍を全部集めなくてはいけませんし、法定相続人全員からハンコをもらわなくてはいけないので、ものすごく大変になってしまいます。
なぜ死亡保険金の受取人を複数人にしてはいけないの?
また、複数人が受取人になっている場合も大変です。
例えば、子供2人が50%ずつ受取人となっているケースです。この場合も、お子さん2人なら2人のハンコが必要になりますし、2人の承諾が必要ということになります。ただこの場合、2人が何ももめていなくて関係が良好だったら、すぐに保険金を受取ことができます。
ですが、もし他の財産の分け方で2人がもめているという場合、やはり保険の受取りだけ、保険の請求だけ2人仲良くハンコを押すというのはあまり考えられません。
なので、もしあなたがこれから生命保険に加入する場合は、例えば1,000万円の生命保険でしたら、1,000万円を50%ずつ受取人を2人にするのではなく、500万円ずつの契約を2つ結んでおく、それぞれの受取人を1人にしておくことをおすすめします。
そうすれば、それぞれが勝手に1人だけで請求ができてすぐに保険金を受け取ることができますからね。生命保険に入る際には、そういったところまでよく考えて契約するのが非常に大切です。
保険というと、入る時には月々の支払い掛金がいくらだとか、そういったところだけに気を取られて、安いか高いかだけを気にして加入する人も多いです。
ですが保険というのは、相続が発生したときや身内が亡くなったときに、いかに問題なく保険金が支払われるか、簡単に受け取れるかというところが非常に大事になってきます。
なので、少しそういったところも、これから保険に加入される方、現在加入されている方も、契約の受取人の欄を確認して気にしていただければと思います。
死亡保険金が複数受取人になっている場合の注意点!
受取人が複数になっている場合、ほとんどの保険会社が、例えば50%ずつ受取りだからといって、その2人に50%ずつ保険金を振り込んでくれるわけではありません。
実際には、「代表口座を指定して下さい」と言われて、「そこにまとめて振り込むので分けるのはそちらで勝手にして下さい」という取り扱いがほとんどです。
なので、もしそこでもめていたら、簡単にまとめて入ってきた保険金をきちんともう1人の相続人に分けるかというと、なかなかそうスムーズにはいきませんよね。ですから、そういった事情もよく考えたうえで、保険の受取人は指定するように注意して下さい。
なぜ母の死亡保険金には相続税ではなく贈与税がかかるの?
お母さんの死亡保険金に贈与税がかけられたのは、おそらく、お父さんが保険料を支払い、被保険者をお母さんにした生命保険に加入して、死亡保険金の受取人を子供にしていたからだと考えられます。
交通事故や病気などにより被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者および保険金受取人が誰であるかによって、相続税、贈与税、所得税のいずれかの課税の対象になります。
これを簡単にまとめると以下のようになります。
@被保険者A保険料の負担者B保険金の受取人=C税金の種類
【1】@父 A父 B子 =C相続税
【2】@母 A父 B子 =C贈与税
【3】@母 A父 B父 =C所得税
【2】のパターン、被保険者と保険料の負担者および保険金の受取人がそれぞれ別の人となっている場合は、保険金受取人、今回のケースでは子供がその保険金を保険料負担者である父から贈与によって取得したものとみなされることから、贈与税の課税の対象になるのです。