死因贈与契約とは|契約書と税金、遺言書と遺留分減殺請求

 

 

死因贈与契約とは?

契約書・税金・遺言書・遺留分減殺請求..

 

 

基本的に死因贈与は、死んだことを原因とする贈与です。なので、本人が亡くなったときにそれが実行されることになります。

 

また、死因贈与は“贈与”という名称が付けられていますが、亡くなったことに起因していることから、いわゆる亡くなったときの贈与という形で、これは税金的には相続税対象になります。

 

つまり、贈与税ではなく相続税ということになるのですね。

 

具体的な死因贈与契約のやり方については、遺言などで「亡くなったらこれを○○にあげる」という形でやるケースが多いです。ですから、基本的には遺言で死因贈与が行われると理解して下さい。

 

ということで、遺言によって「○○にあげる」という形は相続と同じタイミングですから、死因贈与契約は相続税の対象になるという点には注意して下さい。

 

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死因贈与と遺留分減殺の順序は?

 

遺留分減殺請求というのは、生前贈与や遺言の中での遺贈によって、自分の本来の取り分、最低限の取り分すらもらえなかった法定相続人が、請求すれば生前贈与や遺贈をその分取り消すことができるという制度です。

 

こうした遺留分請求をする際に、いくつか遺留分を侵害する行為があったときには、どのような順序で遺留分が減殺がされるのか、これについては法律で規定されています。その中で、贈与よりは遺贈の方を先に減殺するという内容になっています。

 

また、贈与が複数ある場合には死亡に近い方、つまり後に行われた贈与から先に減殺するということになっています。ここは法律で明記されているところになります。

 

例えば、生前贈与が2回あって、さらに遺贈があったケースで遺留分減殺請求をするときには、まず遺贈が減殺されます。この遺贈を減殺されただけでも自分の遺留分がまだ足りないという場合には、贈与の方にいきます。

 

ただし、その贈与が複数あった場合には、死亡に近い方の贈与から先にされます。それでも足りない場合には、もっとさかのぼった贈与について遺留分減殺がされます。

 

 

死因贈与契約と遺留分減殺の順序は?

 

このような遺留分減殺では、贈与と遺贈、あるいは贈与間についての順序は明記されているのですが、死因贈与契約については明確な規定がありません。なので、どのように判断したらいいのかというところが問題になります。

 

死因贈与契約は、契約自体は生前にされているものの、死亡によって効力が発生されるということで、契約は生前されていると生前贈与に近い性質も持っていれば、死亡によって効力を発生すると遺贈に近いような効力もあります。

 

こうしたことから、どのように判断すればいいのか争いがあるのです。

 

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この点について、東京地裁平成12年3月8日の判決ではその順序として、まず遺贈、その次に死因贈与、その次に生前贈与であると判断しています。この実際の裁判例に従って判断するべきという考え方が実務上は有力になっています。

 

 

具体的にどうのような話になるのかというと・・・

 

例えば、死因贈与契約が最初にされていて、また、全然別の生前贈与もされていて、その後に遺贈がされたというケースです。

 

このケースでの遺留分減殺請求の順序としては、まず遺贈で、その次は死因贈与ということになります。つまり、たとえ死因贈与契約が生前贈与よりも先に行われていたとしても、死因贈与の方を減殺するということです。

 

もちろん、さらに足りなければ生前贈与ということになります。

 

順番としては、「遺贈→死因贈与→遺贈」というようになるという見解が有力であるということです。ということで、死因贈与契約も遺留分減殺の対象になるというときには、順序について注意が必要です。

 

 

無効な遺言書が死因贈与契約として認められる?

 

次に、遺言書が無効の場合でも、これが死因贈与契約として贈与の効果が認めるというお話です。

 

遺言書というのは、厳格に形式が定められていますから、例えば署名がないとか自筆ではないとか、色々な要件のもとで遺言書が無効になることがあります。このように無効になった遺言というのは、もう何の効力もないのでしょうか?

 

この点、判例では、場合によっては無効な遺言書でも、書面による死因贈与として有効であると認めています。

 

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ちなみに、これについては、東京高裁昭和60年6月26日判決があります。この判例は、公正証書遺言を作成したのですが、そこに同席した証人が本来は証人になれない代襲相続人の配偶者であったということで、遺言書自体の効力は認められなかったものです。

 

そこで、これが死因贈与として有効なのではないかということで争いになったのです。

 

 

無効な遺言書でも死因贈与契約になるの?

 

問題になったのは、民法550条が「書面によらない贈与を取消し得る」としている点です。つまり、「この公正証書が書面による贈与といえるのかどうか」という点が問題になったのです。

 

贈与の意思表示自体が明確に書面によってされたこと、また直接自分で書いた文書であること、この2つの要件が必要となると、これは書面による贈与とはいえないということになります。

 

というのは、贈与ではなく遺贈の公正証書になっている上、公正証書は本人が直接作成しているものではないからです。しかしながら、判例では、「贈与その他類似の文言が記載されていることは必ずしも必要ではない」と判断しています。

 

そして、当事者の関与または了解のもとに作成された書面において、贈与があったことが確実にわかるという程度の記載がされていれば足りるというように判断しています。

 

つまり、公証役場の公証人が作成した公正証書であっても、「死因贈与の意思表示が明確ではないけれど、その意思があったことはわかる程度に記載された」ということで、書面による贈与として死因贈与の効力を認めています。

 

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ということで、無効な遺言書であっても、死因贈与としての効力が認められることがあります。もし手元の遺言書が無効だとなった場合には、死因贈与として有効ではないか弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

死因贈与契約とは?

 

例えば、父は自分が死んだら土地建物を私にくれると言い、私の面前で遺言書を書き私に預けました。ところが、父の死後に遺言書を見ると作成の日付がなく無効ということがわかったのです。この場合、土地建物の権利はどうなるのでしょうか?

 

まず日付のない遺言書は無効です。ですが、死後に財産贈与するとの合意が認められれば、遺言とは別に、遺言者である父と子供とが亡くなったら財産を贈与する契約が成立しているとみることができます。このような契約のことを「死因贈与契約」というのです。

 

上記のケースでは、死因贈与により土地建物の権利を得ていると言えます。

 

まず贈与とは、財産をあげる人である父と財産をもらう人が「あげます」「もらえます」と合意したもの、すなわち契約です。死因贈与とは、贈与者の死亡を条件にその贈与契約の効力が生じるものです。

 

無効の遺言が死因贈与に転換されるには、4つの条件があります。

 

1つ目は、遺言の内容が財産の遺贈であることです。2つ目は、遺言者が財産を譲り受ける人に遺言の内容を告げていることです。3つ目は、財産を譲り受ける人が贈与を承諾していることです。4つ目は、上記の2つ目と3つ目の条件が証明できることです。

 

贈与の合意を証明するには、書面の場合は筆跡などで本人が書いたものだとわかれば効果的です。なお、口頭の場合は証人が必要です。

 

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