遺言執行者資格のある人とは?
遺言執行者の資格を失う場合は?
今回は、遺言執行者の資格についてのお話です。
遺言執行者というのは、遺言の内容を実現してもらうために、通常は遺言書の中に「○○を遺言執行者に選任する」という記載をします。
その遺言執行者の候補者が、遺言執行者になることを受けてくれれば、その遺言執行者によって遺言の内容が実現されていくということになります。こうした制度になっています。
ただし、遺言執行者にはなれない人もいます。なので、そのなれない人を遺言執行者として選任してしまうと問題になることになります。
遺言執行者になれない人は?
例えば、「法人は遺言執行者になれるのか」ということについては議論のあるところですが、法人であっても遺言執行者になることができます。
一方、遺言が実現して遺言執行者に実際になるという時に、その選任した人が未成年者だった場合にはなることができません。また、その当時、破産者である場合にもなることができません。
このような人を選任してしまうと、遺言執行者の選任というのは意味のないものになってしまいます。
ちなみに、破産者については、破産手続きの開始決定が出ると破産者扱いになりますが、免責の許可といって借金がなくなるという決定がしっかり出れば、基本的には復権といって破産者でなくなる、元に戻るという扱いになっています。
なので、その一定の手続き中になれないという人が多いです。その手続きが終われば、遺言執行者になること自体はできます。
共同相続人の1人、受遺者でも遺言執行者になれるの?
次に、遺言執行者として選任してもいいのかどうかの話です。
まず共同相続人です。何人も相続人がいるうちの一人を遺言執行者として選任することができるのかという問題ですが、これはできます。
また、受遺者といって遺言によって財産等を受け取る第三者、この受遺者を遺言執行者として選任することができるのかという問題もありますが、これも可能です。
むしろ、「その受遺者○○に遺言で財産を与える」というような内容の遺言書であった場合に、そのもらう人を遺言執行者に選任すれば、当然ながら自分にインセンティブが働く動機がありますので、積極的に遺言執行者になって自分のところに移すという作業をしやすくなります。
そのため、このような受遺者を遺言執行者に選任することは有効であると言われています。
ということで、遺言執行者には一応資格がありますが、比較的緩やかですからその選任は有効であると言われます。
遺言執行者が資格を失う場合とは?
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために選任され、実際にその内容を実現するために活動する人です。ただ、その資格を失うタイミングがあります。どのような時に遺言執行者はその資格を失うのかというと・・・
まず1つは、遺言執行を完了した時です。遺言執行者は、遺言の内容を実現させたということで業務が終了となりますので、そのような時には資格を失うことになります。
2つ目は、遺言の内容が執行できない、
執行不能であることがわかった時です..
この時にも遺言執行者は資格を失うことになります。例えば、遺言書が無効であるということで確認裁判が起こされて、実際に無効だと判断されたようなケースです。
また、遺言書の中で、ある財産を特定の人に渡したいと遺贈という手続きが取られていたにもかかわらず、その目的物がない、例えば生前に処分してしまったというようなケースです。
このようなケースでは遺言が執行できないことになりますので、執行不能ということになります。
さらに、遺贈の際に受け取る側、受遺者がその遺贈を放棄したケースです。この場合も財産を渡せなくなりますので執行不能になります。
このように執行が不能の時にも遺言執行者の資格は喪失するとされています。
3つ目は、遺言執行者が亡くなった時です..
遺言執行者の立場というのは、相続されるものではなくて、その人だから任せたという一身専属性がありますので、遺言執行者が死亡した時には資格を失うことになります。
4つ目は、遺言執行者の辞任や解任です..
遺言執行者が自分から辞めるのが辞任、第三者から辞めてくれということで認めてもらうのが解任です。これら2つの手続きによって、遺言執行者の資格を失うこともあります。いずれも正当な事由があったり、家庭裁判所の許可が必要になったりします。
解任の場合には、遺言執行者が仕事をしない、任務を怠っているというようなときに、解任の請求を家庭裁判所にして、家庭裁判所の判断で解任してもらうという形になります。
ということで、このように、遺言執行者についての資格の喪失は限られています。なので、勝手に辞めたり、勝手に辞めさせたり、そういったことはできない仕組みになっています。