自筆証書遺言はデメリットが多い?
公正証書遺言とどっちがいいの?
今回は、遺言書のうち自筆証書遺言について簡単に解説します。自筆証書遺言は、遺言の中でも一番簡単に自分で作成できると言われていて、最も多くの人が利用している遺言書です。
ただ、その自筆証書遺言を専門家のところに持っていって、例えば不動産の名義変更をしてほしいと依頼すると、そんなことまで書かなければいけないのという場合があります。
自筆証書遺言というのは、形式的には法律上の要件さえ整っていれば有効ですから、遺言書がないよりはあった方が全然ましです。
よく本屋に行くと「遺言書キット」なども売られています。ですから、そういったものを利用して形式的に整ったものを書いておけば自筆証書遺言としては問題はありませんので、書かないよりはそれらを利用してでも書かれることをおすすめします。
ただ、いざ遺言をした人が亡くなって、例えば不動産の名義変更をする際には、しないといけないことがあります。それは、家庭裁判所に対して検認という申立てをすることです。
検認のデメリットとは?
その検認をする際には、自筆証書遺言の場合は、相続人全員を明らかにしなければなりません。そうすると、家庭裁判所から相続人全員に対して「○年○月○日に●●が亡くなったので遺言書の検認をします」という連絡がいきます。
つまり、簡易な相続関係なら何も問題はありませんが、あらかじめ紛争や色々な方の主張が予想されるような場合でも、亡くなった事実も含めて、すべての相続人に知られてしまうということです。
一方、公正証書遺言なら、検認は不要ですから、それだけで不動産の名義変更はできます。法律的にも他の相続人に知らせる必要はありません。自筆証書遺言にはこうした問題があるのです。
自筆証書遺言はデメリットが多い?
相談内容で一番多いのが、兄弟相続のケースです。例えば、子供のいない夫婦で、夫の親御さんが亡くなられていて、兄弟が相続人になって、しかも、その兄弟も亡くなっていて、甥や姪までが相続人になるケースです。
要するに、亡くなった旦那さんの配偶者である奥さんにとっては、会ったこともないような相続人に対して知らせていくわけです。
そのような場合に、色々なお願いをしなければならないので、もちろん遺言書はあった方がいいのですが、遺言書があっても自筆証書遺言の場合には、裁判所から検認の時に連絡がいくことになります。
ただ、それを望まないという人もいます。自筆証書遺言で簡単に済ませたいという人もいますが、こうした後々のアフターケアや手続きが残っていることは知っておいて下さい。
この辺りは、公正証書遺言ならばクリアできますので、相談された場合には公正証書遺言をおすすめすることが多いです。もちろん、自筆証書遺言を作りたいと言っている人に、無理やり公正証書遺言でないとダメだとすすめることはありません。
ですが、自筆証書遺言を作成される方にも、こうしたデメリットをお伝えした上で作成のお手伝いをさせていただいています。
ということで、自筆証書遺言は遺言書を作成しないよりは全然ましだけれど、公正証書遺言に比べて亡くなった後の手続きは煩雑になります。
その煩雑さというのは、例えば前妻との間の子供に全然会ったことがないとか、兄弟姉妹の子供(甥や姪)に一度も会ったことがないとか、そういう相続人についても家庭裁判所に申立てをすることが必要になるということです。
自筆証書遺言と公正証書遺言どっちがいいの?
自筆証書遺言は、自分で書いて署名押印すれば完成しますので手軽に作成できます。保管も自分でしますから、すべて1人で完結できます。書き直せば、従来の遺言は撤回できますから、書き直す場合の修正も手軽です。
なので、親族間に争いなどがなくて穏便にいく場合には、自分で遺言書を書いて置いておくというのが費用もかからずよいのかもしれません。
一方、公正証書遺言については、公証役場で作成しなければいけないので費用がかかります。また、弁護士や行政書士など専門家に依頼した場合には、そちらの費用もかかります。さらに、証人も2人以上必要とか、色々と要件があって結構大変です。
ただ、公証役場が遺言書をきちんと保管してくれるメリットがありますから、証拠能力は非常に高いです。ですから、争いが起きそうな場合は公正証書遺言がおすすめです。
また、遺言書の保管がきっちり公証役場でなされるので、その点でも公正証書遺言はおすすめです。最終の意思表示が固まっている、これ以上自分の意思は変わらないという場合は、公正証書遺言にされるのが一番無難だと思います。