自筆証書遺言を発見したら?
検認手続きと遺言書の効力!
自筆証書遺言というのは、相続人自らすべてを自分の手で書いた遺言書のことです。法律上は、厳格にきちんと書かなければならないことが決められています。具体的には、すべての文書が手書きで、それに、日付、氏名、押印が必要です。
自筆証書遺言は、誰の力も借りずに自分だけで書くことができるので、いつでもどこでも、例えば夜中にふと目が覚めた時に自分の部屋で書くこともできます。そういった意味では、利便性が高いと言えます。
ただ、実際にその遺言書で遺言の内容を、万が一ご自身が亡くなった時に実現してもらうためには、この遺言書が有効なものでなくてはなりません。
有効とは何かというと、書き漏れがないことと、それを実現できるだけの「特定」があることです。
特定というのは、例えば、不動産を息子にあげるという場合には、地番や所在など、その不動産がきちんと特定できるような形でなければなりません。また、息子さんの氏名、住所、生年月日もあった方が特定しやすいです。
なかなか自分自身で書くために、そういった意味では内容に漏れが多いこともあります。
「おおむねこういうことを希望して遺言書を書いたのだろうな」ということが後からわかって、それが相続人の間でも全く争いがない場合で、その通りにしてあげたいと思っても、なかなかそうはできないようなケースもありますので注意が必要です。
なので、自筆証書遺言を作成する場合でも、内容に漏れがないかどうか、きちんと希望を実現できるのか、その辺りを専門家にチェックしてもらうとよいと思います。
自筆証書遺言の注意点は?
自筆証書遺言は、前述のとおり、全文を自分で書かなければいけません。
なので、別紙目録について「誰それにあげる」というのがしっかり自分の手で書かれていたとしても、その預貯金目録であったり、不動産目録であったり、そういうものがワープロで書かれて添付されているような場合には、その目録がないと遺言の内容がわからないということで、全体として無効と判断されたケースもありますので注意して下さい。
すべて手書きで書く、またきちんと特定をして実現できるようにする、そういった意味ではかなりハードルが高い遺言の方式とも言えます。
自筆証書遺言を発見したら?
自筆証書遺言とは、相続人自らが手書きで書いて作成した遺言書のことです。「こういう遺言を書いたから、俺に何か万が一のことがあったらこのとおりによろしく頼む」と言って、きちんと家族に預けているケースもあります。
一方で、愛読書の間にひっそり挟んでいるケースもあります。遺品を整理している時、そういった遺言書らしきものが出てきたら、家族はどうすればいいのでしょうか?遺言書を発見すると、開けて読みたくなるのが心情です。
ただ、しっかり封がされていた場合には、それを開けてしまうと、そのことによって中身が変造・偽造されるのではないかといった疑惑が生じてしまうところでもあります。
なので、きちんと封がなされている場合には、基本的にはそのままの状態で、紛失等がないようにしっかり保存をして、それから検認手続きをとるようにして下さい。
検認とは?
検認というのは、家庭裁判所にする手続きです。
検認をするには、まず家庭裁判所に「遺言書を発見したので検認手続きをしたい」という申立てをします。その際には、遺言書を作成した被相続人の相続人が誰なのかということも、ある程度明らかにして申立てをする必要があります。
申立てをすると、家庭裁判所の方から検認手続きの日にちを決める通知がきます。
家庭裁判所は、その遺言書を発見して申立てをした相続人だけではなくて、その他のすべての相続人に対しても「この日に遺言書の検認をしますので、これるようなら来て下さい」というような内容の開催通知を出すことになります。
検認手続きと遺言書の効力は?
ここで重要なのは、検認手続きは遺言書の有効・無効をその場で判断するものではないということです。
あくまでも、裁判官、書記官、その日に集まった相続人が見守る中で「はい、こういう形の遺言書がありましたよ、皆さん確認して下さい」「表にはこう書かれていて、裏にはこう書かれていますよ」「封がされていますね、では今から開けます」と言って、皆の前で開封をして、「内容についてこう書かれています」ということを確認するだけだからです。
一応、これは誰の字か、どう思いますかということを尋ねられるケースもありますが、それで遺言書の有効・無効が判断されることはありません。
もっとも、その場で字を見せられても、それが亡くなった人の字かどうかということを判断するのは難しいと思いますので、わからなければわからないと答えておけば大丈夫です。
そして、「遺言書はきちんとした形でこういうふうに保存されていて、こういうふうになっていて、中身はこういう記載でしたよ」という調書を作ります。後日それを申請するなどすれば、遺言書の内容を各自が知ることができます。
くれぐれも検認手続きは、遺言書の有効か無効かを判断するものではありませんので注意して下さい。
実際にこの遺言書の内容に従って、きちんと遺産分割、あるいは遺言どおりに遺産を分けることができる、取得することができるか、というのは次のステップの問題になります。
自筆証書遺言を発見したら?まとめ
自筆証書遺言というのは、自分でいつでもどこでもすぐに書けるという意味ではメリットはあるのですが、一方で書き漏れであったり法律上の不備があったりすることも多いです。
そうすると、相続人間に争いがないのにもかかわらず、相続人の遺言書どおりにしてあげられないという、歯がゆい状況が生じることもあるのです。
なので、仮に自筆証書遺言で遺言書を作成することを選んだとしても、きちんと専門家の意見を聞いて、無効にならないかどうかを確認することをおすすめします。